医薬患連携システム『おくすりあうん』スタート 難病IBD患者の医療の質向上へ
2024.4.23 Tue
発表のポイント
- バイタルネットと東北大学病院は、炎症性腸疾患(IBD)(注1)に関わる医師、薬剤師、患者を対象としたwebアプリケーション「おくすりあうん」を共同開発しました。
- 「おくすりあうん」は、IBDに関わる医師、薬剤師、患者を対象としたチャットツールと教育プログラムとを統合したシステムです。
- 薬局薬剤師がIBD治療薬を正確に理解し、適切な服薬指導を行うことでIBDの医療の質を向上させるとともに、医療従事者間の情報共有と協力を促進し、より効率的で効果的な患者ケアを実現することを目指しています。
- 2024年4月23日よりバイタルネットが提供を開始します。
概要
近年、日本でIBD患者が増加しており、新たな治療薬の開発が進んでいます。治療が高度化・複雑化する一方で、適切な治療選択のための医師・薬剤師・患者の連携が課題となっています。
株式会社バイタルネット(本社:宮城県仙台市、代表:一條 武(いちじょう たけし))と東北大学病院(宮城県仙台市、病院長:張替 秀郎(はりがえ ひでお))は、消化器内科の正宗 淳(まさむね あつし)教授のグループとの共同研究の成果をもとに、公益社団法人 仙台市薬剤師会(会長:北村 哲治(きたむら てつじ)とIBD患者会「IBD宮城」の協力を得て、IBD患者と薬局薬剤師、薬局薬剤師と主治医を結ぶシステム「おくすりあうん」を共同開発しました。本システムは2024年4月23日にバイタルネットからwebアプリケーションとして提供(医療機関と患者は無償、薬局は有償)を開始します。
「おくすりあうん」は、IBD治療に関する医薬品使用の教育プログラムと、主治医と薬局薬剤師とIBD患者のシームレスな連携に特化した専用チャットツールとを統合したシステムです。専門知識を持った薬剤師が主治医と患者との間でシームレスな連携の架け橋となり、IBD患者の悩みを解消し、最適な治療を実現することが期待されます。
詳細
IBDは主にクローン病と潰瘍性大腸炎に大別され、消化管に慢性的な炎症を引き起こす原因不明の疾患で、国の難病に指定されています。元々は米国やヨーロッパなどの欧米に多い疾患でしたが、近年は日本でも患者数が増加しており、現在約29万人※の患者が国内で治療を受けています。
患者数の増加に伴い、IBD治療薬の開発が進み、治療の選択肢も増えてきました。それに伴い、薬局薬剤師には高度化する医薬品の理解と、治療方針に基づいた的確な服薬指導の必要性が高まっています。しかし、処方を行う病院の医師は、対応する保険薬局を把握することが難しく、薬剤師と直接連絡を取ることがほとんどないため、処方の意図を伝えることができません。
また、IBD患者は自身の処方箋を薬局に持って行っても、初めて行く薬局では在庫がなく、処方された薬をすぐに受け取れないことがあります。さらに、薬局薬剤師にIBDに関する高度な知識がなく十分な服薬指導を受けられない場合があることや、患者自身、生活に合わせた服薬が難しいこともあり、IBD患者は多くの悩みやストレスを抱えています。
「おくすりあうん」は医師と薬局薬剤師の連携の課題、IBD患者の悩みを解消するため、IBD治療に関する医薬品使用の教育プログラムと、主治医と薬局薬剤師とIBD患者のシームレスな連携に特化した専用チャットツールとを統合したwebアプリケーションです(病院、患者:無償提供、薬局:有償提供)。
※厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業 難治性炎症性腸管障害に関する調査研究 総括研究報告書(平成28年度)
特徴
各者におけるメリット
(1)医師
・薬局薬剤師に対して患者にしっかりと説明してほしいこと(例えば、副作用の頻度や初期症状)を伝えることで、そのことについて、薬局でも丁寧な説明がなされます。
・薬局薬剤師に処方意図を伝えることで、医師の説明と齟齬がない的確な服薬指導が可能になり、ひいては疑義照会(注2)が軽減し、タスクシフトによる医師の働き方改革に繋がります。
(2)薬局薬剤師
・教育プログラムで学習することで、処方箋情報からの病状判断がある程度可能になり、医師の処方意図に基づいた的確な服薬指導が可能になります。
・医師と同様に適正な疑義照会が可能になり、患者の待ち時間が軽減されます。
(3)患者
・チャットツールを用いて処方箋画像を送ることにより、当日の受け取りが可能かどうか、薬の準備ができるまでの時間が分かり、それまでの時間を有効活用できます。
・服薬期間中の体調の不安や、薬の飲み方、診察時に医師へ伝え忘れたことなどをIBDに詳しい薬局薬剤師に気軽に相談できます。
「おくすりあうん」の名称は、薬を軸にして医師と薬剤師、薬剤師と患者が「阿吽の呼吸」のように、気持ちや考えが通じ合った連携ができるようにという思いから名付けました。また、親しみを込めて平仮名にしました。
今後の展開
下図のように「おくすりあうん」は、専門知識を持った薬剤師が主治医と患者との間でシームレスな連携の架け橋となり、IBD患者の悩みを解消し、最適な治療を実現します。
この取り組みは、薬局薬剤師がIBD治療薬を正確に理解し、適切な服薬指導を行うことで、IBD患者の医療の質を向上させることを目的としています。また、医療従事者間の情報共有と協力を促進し、より効率的で効果的な患者ケアを実現することを目指しています。
また、本取り組みで得られた知見を活かし、将来的には他の疾患に拡げて参ります。


用語説明
注1.炎症性腸疾患(IBD):主にクローン病と潰瘍性大腸炎の総称で、いずれも国の指定難病である。原因不明の難治性の慢性腸炎であり、若年者での発症が多く、急な腹痛や下痢などで日常生活に支障をきたし外科手術を必要とすることもある。そのため多くの患者は長期に継続的な治療を必要とする。
注2.疑義照会:薬剤師が処方箋を元に調剤を行う際、処方箋の記載に疑問点や不明点を感じた場合に、処方箋を発行した医師に対して内容の確認を行うこと。
問い合わせ先
(報道に関すること)
東北大学病院広報室
TEL:022-717-8032
Email:press*pr.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
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