もしかしたらフレイルかも?
リハビリテーション科 科長|海老原覚
2025.4.25 Fri
筋力など低下、老い進む
要介護に近づく
「最近疲れやすい」「歩く速度や握力が低下した」「体を動かす機会が減った」…。高齢の方で、こんなことはありませんか? それ、もしかしたらフレイルかもしれません。
フレイルとは年を取るとともに筋力や活動が低下している状態で、健常と要介護の間の状態を言います。人は年齢を重ねていくと、心身や社会性などの面でダメージを受けたときに、予備能と呼ばれる回復力が徐々に低下。健康に過ごせていた状態から、生活するために支援が必要な要介護状態に変化していくのです。
年齢とともにダメージを受ける臓器はさまざまなため、フレイルには多面性があり、大きく三つに分類されます。
1番目は「身体的フレイル」です。歩く、走る、座る、立つといった移動機能が低下したり、筋肉・筋力が衰えたりするのが代表的な例です。高齢期になって過度に骨格筋量が減少し、筋力の消失が進んで身体機能が低下することで、生活の質(QOL)や健康が阻害されるリスクを伴う状態をサルコペニアと呼びます。
2番目は「精神心理的フレイル」です。定年退職することやパートナーを失うことで引き起こされるうつ状態や、加齢による脳機能の衰えによる軽度の認知症の状態などを指します。
3番目が「社会的フレイル」です。高齢になって社会とのつながりが希薄化することで生じる孤立や閉じこもり、経済的困窮の状態などをいいます。
予防で進行遅く
これら三つのフレイルが相互に影響し合い、日常生活の自立度が低下する「老い」は急速に進みます。どのフレイルが取っかかりになるかは、その人次第です。老いとは必ずしも身体だけの問題ではなく、三つそれぞれに注意を払うことが重要です。
ただ、フレイルには「可逆性」という特性もあります。自分の状態と向き合い予防に取り組むことで、その進行を緩やかにし、健康に過ごせていた状態に戻すことができます。
予防のため皆さんが取り組むべき柱は三つあります。一つは、たんぱく質を取り、バランス良く食事をするなどの「栄養」です。二つ目は、歩いたり、筋トレをしたりするなどの「身体活動(運動)」です。三つ目は、就労や余暇活動、ボランティアなどに取り組む「社会参加」です。
河北新報掲載:2025年1月24日

海老原 覚
(えびはら さとる)
東京都出身、宇都宮高校卒業。1990年東北大学医学部卒業。2014年東邦大学医療センター大森病院リハビリテーション科教授。2022年東北大学大学院医学系研究科内部障害学分野教授。その後の診療科・分野統合により現在東北大学大学院医学系研究科臨床障害学分野教授・東北大学病院リハビリテーション科長。