海外ではしか流行
青柳哲史(東北大学病院 総合感染症科 科長)
2025.7.18 Fri
予防接種の記録、確認を
強い感染力特徴
2025年に入り、仙台市を含む複数の都市で、はしかの感染者が相次いで確認されています。現在、中東や東南アジアではしかが流行しています。日本での感染者の報告は海外渡航歴のある人が多く占めていますが、渡航歴のない人にも感染が確認されており注意が必要です。
はしかは麻疹ウイルスによる感染症で、非常に感染力が強いのが特徴です。免疫がない場合、同じ空間にいるだけで容易に感染します。感染すると10~14日後に発熱、目の充血、せきなどの症状が現れます。
風邪と似ていますが、注意すべきポイントは、一度熱が下がった後、12~24時間後に再び高熱になり、同時に鮮紅色の皮疹が現れることです。皮疹は額や耳の後ろ、首から始まり、2日ほどで全身に広がります。その後、色素沈着を残しながら回復していきます。
特効薬存在せず
口の中の頬粘膜に白いスポット(斑点)が現れることも特徴です。はしかは肺炎や中耳炎を合併しやすく、1000人に1人の割合で脳炎を発症するとされています。特効薬はなく、症状を和らげる治療が中心となります。
人から人への感染力を持つ期間は、皮疹出現の前後4日程度とされています。感染力が非常に強いため、医療機関を受診する前に必ず事前に連絡をし、受診が必要かどうかや注意点を確認してください。他者への感染を防ぐため、受診時は公共交通機関の利用をなるべく控え、外出を最小限にすることが求められます。
はしかはワクチン接種により予防可能な感染症です。日本では、1歳児(第1期)と小学校就学前1年間の幼児(第2期)を対象に、麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)の2回接種を定期接種に導入しています。
2回接種することにより、99%の人がはしかに対する免疫を獲得します。感染しても発症を抑え、発症しても軽症で済むとともに、他者への感染力も低くなると言われています。
新型コロナウイルスの影響でワクチン接種率が低下している可能性が指摘されています。いま一度、母子手帳や予防接種記録を確認し、未接種の場合は早めの接種を検討しましょう。感染拡大を防ぐためにも正しい知識を持ち、ワクチン接種など適切な感染対策を行うことが重要です。
河北新報掲載:2025年4月25日

青柳 哲史
(あおやぎ てつじ)
東京都出身。2002年東北大学医学部卒業。2010年東北大学大学院医学系研究科修了。米ミシガン大学医学部visiting professor、東北大学大学院医学系研究科総合感染症学分野准教授などを経て、2023年より東北大学医学系研究科感染病態学分野・総合感染症学分野教授、東北大学病院総合感染症科科長に就任。