原発性アルドステロン症
高瀬圭(東北大学病院 放射線診断科 科長)
2025.7.25 Fri
副腎の腫瘍 電流で焼灼
現在、実に国民の3人に1人が高血圧だと言われています。高血圧には「50%の法則」があると言われ、診断された人は全体の50%、治療を受けている人はその50%、治療を受けて目標降圧を達成できている人は、そのまた50%程度です。高血圧は自覚症状がない病気ですが、放置していると動脈硬化から脳梗塞・脳出血や心筋梗塞、慢性腎臓病など重大な病気を引き起こす可能性が高くなります。
高血圧症の10%
高血圧の約80%は、はっきりした原因が分からない「本態性高血圧」ですが、残りの約20%は何らかの原因疾患があって血圧が上昇する病態で、「二次性高血圧」と呼ばれます。二次性高血圧症の中でも最も頻度が高いのが「原発性アルドステロン症」です。血圧を高くするホルモンの一つであるアルドステロンが過剰に分泌されることで引き起こされ、全高血圧症の10%程度を占めるとされています。
普通の高血圧に比べて、脳梗塞は4倍、心筋梗塞は6倍、不整脈は12倍の高い頻度で合併するとされています。比較的若い人の高血圧、治療抵抗性や重症の高血圧、急な血圧コントロール不良、血液中のカリウムが低い場合-などは疑ってみる必要があります。血液中のアルドステロンを測ることである程度の診断ができますが、確定診断には内分泌の専門医による検査が必要です。
ホルモン過剰に
原因は、副腎内に生じた良性腫瘍(腺腫)、あるいは過形成によって副腎からアルドステロンが出過ぎることです。両側の副腎が原因の場合(両側性)と、片側の副腎からのみアルドステロンが過剰に出ていて、反対側は正常な場合(片側性)とがあります。脚の付け根から細いカテーテルを副腎の近くまで入れて採血する「副腎静脈サンプリング」で、どちらのタイプか診断できます。
片側性の場合は、左右二つの副腎のうち、原因となる腺腫のある側の副腎を腹腔(ふくくう)鏡手術で摘出することで治療できます。
より体に優しい治療法として東北大学病院では、高周波電流を流せる細い針(ラジオ波焼灼(しょうしゃく)針)を、コンピューター断層撮影(CT)で見ながら副腎に刺して原因腺腫を焼き切る新しい治療法(ラジオ波焼灼療法)を開発し、2021年6月に保険適用となりました。
本治療では、CTで観察しながら、患者さんの背中から副腎の腺腫に針を1、2本刺して、ラジオ波(高周波電流)を出し加熱して病変を焼き切ることにより、アルドステロン分泌を正常化させます。手術もラジオ波焼灼療法も「片側性」のアルドステロン症に限られますが、根治の期待できる治療法です。
詳しくはYouTubeチャンネルで
東北大学病院 放射線診断科では、糖尿病代謝内分泌内科の高血圧専門医、内分泌代謝科専門医の協力で、原発性アルドステロン症や高血圧についてわかりやすく説明するYouTubeチャンネル「高血圧チャンネル」を運営しています。ぜひご視聴ください。

河北新報掲載:2021年11月26日
一部改訂:2025年7月25日

高瀬 圭
(たかせ けい)
栃木県出身。1989年東北大学医学部医学科卒業。国立循環器病センター、石巻赤十字病院、フンボルト大学シャリテ病院、東北大学放射線診断科助教、准教授を経て2015年より同大大学院医学系研究科放射線診断学分野教授、東北大学病院放射線診断科科長に就任。