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〔いのち)の可能性をみつめる

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東北が大好き、という指出一正さん。山形市の「やまがたクリエイティブシティセンターQ1」内にある本屋「ペンギン文庫」にて

わたしの眠りかた・指出一正さんの場合

編集者

いい仕事をしている人は、きっと、いい眠りをしている。
そんな仮説をもとに、さまざまな領域で注目すべきお仕事をされているかたたちに「じぶんの眠り」について語っていただくインタビューシリーズ。それが「わたしの眠りかた」。
今回ご登場いただくのは、指出一正さん。
未来をつくるSDGsマガジン『ソトコト』の編集長であり、日本各地の山や川と親しむ達人であり、ローカルを元気にするさまざまなプロジェクトをリードしたり鼓舞したりする人であり、東京と神戸との二拠点生活の実践者であり、内閣官房や総務省などの国の委員も務める人であり、釣りへの愛が深い人であり、『日本関係人口協会』の理事であり、2024年には『On the Road 二拠点思考』という本を出された著者であり。そして、その刊行からわずか1年後の2025年には続編『On the Road 2スーパーウェルビーイング』を世に送り出してしまうという、素晴らしくハイピッチなパフォーマンスを発揮されています。
さて、そんな指出さんは、いったいどんな眠りをされているのでしょうか、お話を伺います。

指出一正 Sashide Kazumasa
『ソトコト』編集長、一般社団法人『日本関係人口協会』理事。1969年群馬県生まれ。上智大学法学部国際関係法学科卒業。雑誌『Outdoor』編集部、『Rod and Reel』編集長を経て、現職。
島根県「しまコトアカデミー」メイン講師、兵庫県「ひょうご関係人口創出拡大・絆プロジェクト」総合監修、静岡県「地域のお店デザイン表彰」審査委員長、秋田県鹿角市「かづコトアカデミー」メイン講師、福島相双復興推進機構「ふくしま未来創造アカデミー」メイン講師、群馬県庁31階「ソーシャルマルシェ&キッチン『GINGHAM(ギンガム)』」プロデューサーをはじめ、地域のプロジェクトに多く携わる。内閣官房、総務省、国土交通省、農林水産省、環境省などの国の委員も務める。経済産業省「2025年大阪・関西万博日本政府館」クリエイター。上智大学「オールソフィアンズフェスティバル2025」実行委員長。
著書に『ぼくらは地方で幸せを見つける』(ポプラ新書)『On the Road 二拠点思考』(ソトコト・ネットワーク)『On the Road 2 スーパーウェルビーイング』(一般社団法人日本関係人口協会)がある。
ソトコトオンライン https://sotokoto-online.jp/
一般社団法人 日本関係人口協会 https://kankeijinko.jp/

指出

たとえば、東京から実家のある高崎まで車で向かう2時間ほどのあいだ。最初の半分をぼくが、残り半分を妻が、というように運転時間を分担して、妻が運転してくれているあいだに寝る、ということはよくあります。「じぶんが寝る」と決めてしまえば、その時間を眠りに当てることはわりとたやすい。そういう仕事癖がついています。

アウトドア雑誌の編集を長くやってきたので、日本各地の川や湖、キャンプ場への取材にはずいぶん行きました。魚釣りの取材で早朝6時に現地集合となれば、東京から車で向かうことが多く、8時間くらいのドライブになります。そういうときはだいたい同僚とふたりで夜の22時に出発して、2時間ずつ交代しながら運転時間をイーブンにシェアします。このとき大事なのが、途切れ途切れのそのわずかな時間にしっかりと寝ておくこと。それができないと目的地に着いてからがたいへんで、灼熱の炎天下でまともに動けない、ということになりかねません。だから、どんなに狭くて窮屈な車の助手席でも、どんなにわずかな時間でも、そこで寝ておく。もちろん、それが快適かと問われれば決して快適とは言えないけど、そうしなければスッキリした頭で仕事することができなくなってしまう。だから、眠る空間や環境をお膳立てすることよりも、「確保されたその時間はちゃんと寝る」ことがぼくにとっては大切です。

どんな環境であっても寝る、というスタンスを教えてくれたのは、大学時代の山登りの先輩たちです。山でテントを張ったあとですごい雨が降って水浸しになってしまったらどうするか、というと、先輩たちは山小屋のトイレで寝ていました。大学1年のときに間近でその姿を見て、「この環境で眠れるなんてすごい」と驚いたとともに「じぶんもこうならないといけない」という脅迫観念みたいなものを植えつけられた気がします。

眠りに入るためによくやるのは、大好きな文庫本を1冊読むことです。ぼくの大好きな文庫本というとだいたい60年くらい前の古いもので、活字がものすごくちっちゃいから、集中しないと読めません。いざ読みはじめると、あまりにもいい本すぎるので、「どんどん読み進めることはこれ以上したくない。あと1行にとどめておこう」という気持ちになって、眠りへと導かれてゆくようです。この「すごく好きだから前に進めない本」を睡眠導入に利用するというのは、ちょっとした技術かもしれません。ぼくの場合、串田孫一さんの本がまさにそうで、ページをめくるたび「なんて美しい文章だろう。きっとこの先にもいいものが待っている……。だからもう、これ以上読みたくない」という気持ちになります。これまでに何回読んだかわからないぐらい読んでいるのに、『山のパンセ』をひらけばいつも「あぁ、いい文章だなぁ。でも、もうもったいないな」と。

ところでぼくは、ベッドで寝ているときに金縛りにあって心霊現象を見ることがよくあります。そういうことを言うと、「夢でしょう?」なんて言われたり、じぶんでも「夢かもしれないなぁ」と思ったりもしますが、でも、あまりにもリアルすぎるし、その光景をまざまざと覚えているんです。
夜中に「あ、また金縛りがきた」と思ったときにはもう体を動かすことはできなくて、「なんかイヤだなぁ」と思ってゾワゾワしていると、部屋の窓から毛むくじゃらのちっちゃな人があらわれて、ゆっくりこっちに近づいて来て、ぼくの足に触れてくる。ようやく金縛りが解けると、「ぅわーっ」って叫びながら起きるんです。
毛だらけの蜘蛛みたいな人がリズミカルに体を揺らしながら笑顔で近づいてきたこともありますし、この前はちっちゃなカッパがあらわれました。夜中にやっぱり「ぅわーっ」と叫んでとび起きたら、横で寝ていた妻が「またなんか来た?」と言うので、「カッパ……」って答えたらゲラゲラ笑っていました。
だいたいどれも枕元あたりに来るということはなくて、足元のほうに寄って来て、ぼくの足を触ってくるんです。これまでずいぶんいろいろなものを見てきました。なんでそういうものを見るのか、なんでカッパなのか、なんで足元なのか。不思議です。

撮影協力/ ペンギン文庫(やまがたクリエイティブシティセンターQ1内)
TEXT, PHOTO/ 空豆みきお

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