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コロナ禍が社会生活に与えた影響を捉える大規模調査 -データの詳細をまとめた論文を発表-

発表のポイント
  • 新型コロナウイルスの流行が人々の暮らしや健康に与えた様々な影響を調べるため、一般住民約3万人を対象とした大規模インターネット追跡調査(2020年8月に開始したJapan COVID-19 and Society Internet Survey:JACSIS研究)を実施し、調査設計や対象者、収集項目などデータの詳細をまとめた論文を発表しました。
  • コロナ前の調査データと本調査をつなげることで、コロナ禍前後の社会生活全般(収入や雇用状況、心の健康、生活習慣、ワクチン接種状況など)の変化が比較できる、世界的にも貴重なデータです。
  • 本データは、健康格差の実態解明や科学的根拠に基づく政策づくりへの貢献が期待されるとともに、外部研究者にも共有され、継続的な調査によりさらなる研究展開が可能です。
概要

東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野の田淵貴大准教授は、京都大学大学院医学研究科医療疫学分野の染小英弘らとともに、新型コロナウイルスの流行が日本社会に与えた影響を幅広く調べるため、大規模なインターネット追跡調査プロジェクト「Japan COVID-19 and Society Internet Survey(JACSIS研究)」を立ち上げ、その詳細をまとめた論文を発表しました。
本調査は、2020年8月の開始以降、年に2回、全国の一般住民約3万人を対象にした追跡調査で、コロナ禍・ポストコロナにおける人々の暮らしや健康、行動の変化を知るための基盤となっています。コロナ前の2015年から今も続いている「Japan Society and new Tobacco Internet Survey (JASTIS研究)」の参加者も含まれており、コロナ前後の社会生活全般(収入や雇用状況、心の健康、生活習慣、ワクチン接種状況など)を客観的に評価できます(図1)。本論文では、調査方法や対象者の特徴、質問項目の内容、データの強みなどを体系的に整理しました。今後も、定型項目に加え、新規項目を導入し、継続的な調査によりさらなる研究展開が期待されます。
本研究成果は、2026年3月10日に医学雑誌 International Journal of Epidemiology誌に掲載されました。

詳細な説明

研究の背景と経緯
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は、感染症そのものによる健康被害だけでなく、外出自粛や経済活動の停滞を通じて、人々の暮らしに大きな影響を与えました。しかし、個々人の社会生活や健康面の詳細な影響について、特に「どのような人がより大きな打撃を受けたのか」という格差の実態を、包括的に捉えたデータは限られていました。

研究の内容
東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野の田淵貴大(たぶち たかひろ)准教授は、京都大学大学院医学研究科医療疫学分野の染小英弘(そめこ ひでひろ)らとともに、これらの課題に取り組むためにJACSIS研究を立ち上げました。本研究は、主として全国の16歳から79歳(継続調査では80歳以上も含む)の男女を対象とし、インターネット調査会社に登録している方々の中から、日本の人口構成(性別、年齢、住んでいる地域)を反映するように選んだ参加者を対象にしています。
調査で集めている情報は、基本情報(年齢、性別、住んでいる地域、家族構成など)、暮らし向き(学歴、収入、雇用形態、仕事の状況の変化など)、健康状態(気分の落ち込みや不安、自分の健康の評価、持病の有無、生活の質など)、生活習慣(タバコ、お酒、運動、睡眠など)、コロナ関連(感染経験、ワクチン接種の状況や考え方、感染への不安、予防行動、病院受診を控えたかなど)、社会的なつながり(孤立感、孤独感、子ども時代の体験など)など、多岐にわたります。
これまでの分析からは、「Go To トラベルキャンペーンを利用した人が、利用しなかった人に比べてコロナ関連症状を経験するリスクが高かったこと」や、「コロナ禍で収入が減るなど経済状況が悪化した人は、歯の痛みを訴えることが多かったこと」などの知見が明らかになっています。これらの研究成果は、既に100本以上の論文として報告されており、政策づくりの検討材料としても活用されています。
本研究の最大の強みは、コロナ前からの縦断データがあること、社会生活全般の広い項目を網羅的に捉えていること、そして、様々な分野の研究者が連携していることです。これにより、単に「今どうなっているか」を調べるだけでなく、「何が原因でそうなったのか」という要因について検討する分析が可能となっています。

今後の展開
今後は、これまで蓄積したデータも活用して、長期的なパンデミックの影響、例えば、心の健康や慢性疾患への影響、そして経済格差が健康に及ぼす仕組みの解明などが進むことが期待されます。
また、本データは所定の手続きを経ることで外部の研究者も利用できるようになっており、より多くの人が研究に参加できる「オープンサイエンス」を推進し、様々な視点からの研究成果を生み出すプラットフォームとしての役割も担っています。

図1. JASCSIS研究の概念図
謝辞

本研究は、日本学術振興会科学研究費助成事業、厚生労働科学研究費助成事業、日本医療研究開発機構(AMED)、科学技術振興機構(JST)などの支援を受けて実施されました。 また、本論文は『東北大学2025年度オープンアクセス推進のためのAPC支援事業』の支援を受け、オープンアクセス論文として公開されています。

論文情報

タイトル:Data resource profile: the Japan COVID-19 and Society Internet Survey (JACSIS)
JACSIS研究(Japan COVID-19 and Society Internet Survey)のデータ紹介
著者:Hidehiro Someko, Keisuke Anan, Takahiro Tabuchi*, Takashi Yoshioka, Ryo Okubo, Yuki Furuse, Kota Katanoda, Takeo Fujiwara, Naoki Kondo, Yosuke Yamamoto
染小 英弘、阿南 圭祐、田淵 貴大*、吉岡 貴史、大久保 亮、古瀬 祐気、片野田 耕太、藤原 武男、近藤 尚己、山本 洋介
*責任著者:東北大学大学院医学系研究科 公衆衛生学分野 准教授 田淵貴大(たぶち たかひろ)
掲載誌:International Journal of Epidemiology
DOI:10.1093/ije/dyag025
URL:https://doi.org/10.1093/ije/dyag025

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野
准教授 田淵 貴大(たぶち たかひろ)
TEL:022-717-8123
Email: takahiro.tabuchi.a5*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院 医学系研究科・医学部広報室
TEL: 022-717-8032
Email:press.med*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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