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切除不能膵がんの第II相医師主導治験の開始について -標準療法へのTM5614(治験薬)の上乗せ効果を明らかに-

発表のポイント
  • 最難治がんである「膵がん」に対して、東北大学発のPAI-1(プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1)1阻害薬であるTM56142の有効性を明らかにする医師主導治験を開始します。
  • 切除不能膵がんに対する標準療法である、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル治療(GnP療法)3に、経口薬であるTM5614を同時に投与し、標準治療に対して上乗せ効果があるかどうかを明らかにします。
  • TM5614は、これまで悪性黒色腫(メラノーマ)や血管肉腫などの悪性腫瘍に対して有効性が確認されています。
  • 本試験は東北大学病院を中心とした多施設共同治験として実施され、膵がん治療の新たな治療選択肢創出を目指します。
概要

膵がんは最も予後不良な悪性腫瘍であり、診断時の約半数以上が遠隔転移を伴う進行例です。近年FOLFIRINOX療法4やGnP療法の導入により治療成績は改善していますが、5年生存率はいまだ約10%に留まり、新規治療法の開発が必要です。
東北大学病院総合外科の海野倫明教授らのグループは、遠隔転移を有する切除不能膵がんまたは再発膵がん患者を対象に、標準化学療法であるGnP療法に、東北大学発の新規PAI-1阻害薬TM5614を併用する探索的第II相医師主導治験を、2026年5月から国内3医療機関で開始します。
TM5614は、東北大学で創薬された経口PAI-1阻害薬であり、腫瘍内線維化抑制、がん関連線維芽細胞5抑制、腫瘍関連マクロファージ6制御、細胞障害性T細胞7活性化を介して、膵がん特有の免疫抑制性腫瘍微小環境の改善を目指します。
本治験では、TM5614併用による抗腫瘍効果の増強と薬剤耐性の改善の可能性を検証し、膵がん治療における新たな併用療法開発に寄与することが期待されます。

研究の背景と経緯
膵がんは豊富な線維成分を特徴とし、これが薬剤送達障害および免疫抑制の主要因となっています。PAI-1は膵がんで高発現し、予後不良と相関することが知られています。TM5614はPAI-1を阻害することで、腫瘍線維化抑制、がん関連線維芽細胞抑制、腫瘍関連マクロファージ抑制、細胞障害性T細胞活性化、薬剤感受性改善を誘導し、既存化学療法との相乗効果が期待されています。

研究の内容
東北大学病院総合外科の海野倫明(うんの みちあき)教授らのグループは、遠隔転移を有する切除不能膵がん、または再発膵がんの患者に対して、標準治療であるGnP療法(4週1コース)をベースに、TM5614を1日1回連日経口投与します(最大48週間)。主要評価項目を48週時点における奏効率 (ORR)8とし、標準治療単独を上回る有効性の概念実証(POC)9の取得 を目指します。また、副次評価項目として無増悪生存期間 (PFS)10や全生存期間 (OS)11、プロトコール治療の安全性12についても多角的に評価します。

今後の展開
本治験により、TM5614が膵がんにおける標準化学療法の治療効果を増強できることが示されれば、膵がん治療における新たな併用治療戦略としての実用化が期待されます。さらに、TM5614は化学療法のみならず免疫療法との併用展開も期待されており、膵がんに対する集学的治療の発展に貢献する可能性があります。東北大学は、アカデミア創薬による革新的治療法の開発を推進し、難治がんの克服に向けた研究開発を加速していきます。

図1. プロトコール治療の概要
  1. PAI-1(プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1) :線溶系制御因子であり、がん進展・免疫抑制・線維化に関与する分子。 ↩︎
  2. TM5614:東北大学で開発された新規経口PAI-1阻害薬。 ↩︎
  3. GnP(ジーエヌピー)療法:ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法。転移性膵がんに対する標準治療の一つ。 ↩︎
  4. FOLFIRINOX(フォルフィリノックス)療法:5-FU、レボホリナート、イリノテカン、オキサリプラチンの4種類の抗がん剤を組み合わせた点滴治療。転移性膵がんに対する標準治療の一つ。 ↩︎
  5. がん関連線維芽細胞:腫瘍内線維化および免疫抑制に関与する細胞群。膵がんの悪性度を反映する特徴の一つ。 ↩︎
  6. 腫瘍関連マクロファージ:腫瘍促進性免疫環境形成に関与する免疫細胞。 ↩︎
  7. 細胞障害性T細胞: 免疫細胞(リンパ球)の一種で、がん細胞やウイルスに感染した細胞を異物として認識し、直接攻撃して破壊する役割を持つ細胞。キラーT細胞とも呼ばれる。 ↩︎
  8. 奏効率(ORR):治療によってがんが消失、または一定以上の割合で縮小した患者の割合のこと。 ↩︎
  9. 概念実証(POC):新しい治療法や薬が、意図した理論通りに人間で効果や安全性を示すことを確認すること。 ↩︎
  10. 無増悪生存期間 (PFS):がんが進行せずに落ち着いている期間のこと。 ↩︎
  11. 全生存期間(OS):がんの状態に関わらず、治療開始から生存した期間。治療の有効性を評価する上で最も重要な指標とされる。 ↩︎
  12. 安全性の確認: 治療による副作用の有無やその程度、および患者がその治療に耐えられるか(忍容性)を評価すること。 ↩︎
問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学病院総合外科 肝胆膵・移植グループ
教授 海野 倫明
TEL: 022-717-7205
Email: michiaki.unno.e5*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学病院広報室
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
TEL: 022-717-8032 
E-mail: press.med*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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