発表のポイント
- 40歳代女性を対象とした乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するための大規模ランダム化比較試験1(J-START)2では、マンモグラフィと超音波を併用した検査による「乳がん死亡率の低下」を科学的に検証しています。
- J-STARTの継続・発展に向けては長期追跡が不可欠ですが、適切に運用するためには、公的資金や大学の予算のみでは必ずしも十分に支えきれない、という現実に直面しており、2026年8月1日(土)から10月30日(金)まで、クラウドファンディングに挑戦します。
- ご寄附をもとに、7万人以上の研究参加者の継続的な追跡調査を行うことで、乳がん検診の将来のあり方を左右する科学的根拠の創出を目指します。
概要
乳がんは日本の女性において最も罹患数の多いがんであり、特に40歳代の若年層における対策が急務となっています。東北大学大学院医学系研究科乳腺・内分泌外科学分野の原田成美准教授らの研究グループは、マンモグラフィ単独検診とマンモグラフィ+乳房超音波併用検診を比較する世界初・日本発の大規模ランダム化比較試験「J-START」を立ち上げ、20年間にわたり7万人以上の協力を得て研究を進めてきました。2026年2月には、マンモグラフィに超音波検査を追加することで進行乳がん(ステージII以上)の累積罹患率が約17%低下することを示す重要な科学的根拠を医学雑誌『The Lancet』に発表しました(参考文献)。
この度、公的研究費の削減や物価・郵送費の高騰という課題に直面していることを踏まえ、さらなる長期追跡と研究の継続・発展を目指し、クラウドファンディングサービス「READYFOR」にて寄附金の募集を開始します。
タイトル:J-START|7万人が参加する乳がん検診の研究、継続へのご寄付を
寄附募集期間:2026年8月1日 (土)9時 〜 2026年10月30日(金)23時
寄附募集ページ: https://readyfor.jp/projects/J-START


詳細な説明
研究の背景と経緯
現在の国の指針における乳がん検診は40歳以上を対象にマンモグラフィ(乳房X線撮影)が基本となっていますが、40歳代の女性や日本人・アジア人に多い「高濃度乳房3」では、腫瘍と乳腺がともに白く写るためしこりが見つけにくいという課題がありました。この課題を解決すべく、厚生労働省のプロジェクトとして2006年に立ち上げられたのが「J-START(Japan Strategic Anti-cancer Randomized Trial)」です。これまでに23都道県・42研究参加団体から76,196人の協力を得て研究が進められてきました。
研究の内容
本研究では、40歳代の健康な女性を「マンモグラフィ検査に超音波検査を併用するグループ」と「マンモグラフィのみのグループ」に分け、がんの進行度や死亡率を比較し有効性を検証しています。約15年間の調査解析により、超音波検査を追加した群では進行乳がんが見つかる割合を約17%減らせることが判明し、2026年2月に世界的に評価の高い医学雑誌『The Lancet』に二次解析の結果が掲載されました。超音波の併用が進行がんを減らし得ることを示す重要な科学的根拠です。
今後の展開
超音波併用検診が最終的な目的である「乳がんによる死亡率を減らせるか」を証明するためには、今後もさらに長期にわたる追跡調査が必要です。しかし、婚姻に伴う姓の変更や転居が多い世代を対象とするため、同一人物判定のための定期的なコンタクトが必要不可欠な中、公的研究費の削減や物価・郵送費の高騰という大きな課題に直面しています。 クラウドファンディングでいただいた寄附金は、Webアンケート構築や郵送調査、住民票調査といった精度の高い追跡調査をすべての参加者様を対象に実施し、2033年度末を一つの目安としたデータ締め切り・解析を行うための研究維持体制費として大切に活用されます。
クラウドファンディングへのご寄附のお願い
本研究は、20年間にわたりご理解とご協力をいただいた日本全国の7万人を超える参加者の皆様、医療関係者、およびこれまで多大なる公的研究費を投じてくださった国のご支援によって支えられてきました。これまでの想いとデータを未来の女性たちにつないでいくため、皆様の温かいご支援を心よりお願い申し上げます。
用語説明
- ランダム化比較試験(RCT):研究の対象者をランダムに複数のグループに分け、治療法や検診法の効果を科学的に最も厳密に検証する研究デザイン。 ↩︎
- J-START(Japan Strategic Anti-cancer Randomized Trial):乳がん検診における乳房超音波検査の有効性、乳がん死亡率減少効果を検証することを目的とした日本発の世界大規模なランダム化比較試験。 ↩︎
- 高濃度乳房:乳腺組織の密度が高く、マンモグラフィ画像で全体的に白く写る乳房の性質。特に40代の若い女性や日本人・アジア人に多くみられます(体質であり病気ではありません)。 ↩︎
参考文献
Cumulative incidence of advanced breast cancer in women aged 40
49 years in the Japan Strategic Anti-cancer Randomised Trial (J-START) of
adjunctive ultrasonography: a prespecified secondary analysis
Narumi Harada-Shoji et al., Lancet; 407(10530): 784-793.
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科
乳腺・内分泌外科学分野
准教授 原田 成美(はらだ なるみ)
TEL: 022-272-3011
Email: narumi.harada.a3*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
TEL:022-717-8032
Email:press.med*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
- 関連資料
- プレスリリース資料(PDF)
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- 乳腺・内分泌外科学分野