
医療と地域つなぐ「医風堂々」の2日間
第26回東北大学医学祭を終えて
医療と地域つなぐ「医風堂々」の2日間
第26回東北大学医学祭を終えて
趙世源(東北大学医学部医学科・第26回東北大学医学祭実行委員長)
2026.1.14 Wed
星陵キャンパスで3年に1度開かれる医学部・歯学部の大学祭「東北大学医学祭」。70年以上続く伝統ある行事ですが、コロナ禍も経て今年9年ぶりの全面開催となりました。多彩なプログラムを通して医療従事者およびそれを目指す学生と来場者の方々との信頼関係を育んだ今回の医学祭を、実行委員長を務めた趙世源さんに振り返ってもらいました。
9年ぶり完全開催の医学祭に1万人が来場

2025年10月12日、13日の両日、皆さまのご支援・ご協力の下、第26回東北大学医学祭を無事に開催することができました。医学祭は私を含め学生主体で運営し、その学びや活動の成果を開かれた場で発表することで、学生、東北大学医学部、そして地域の皆さまとの三者交流の場を設けることを目的としています。
3年に1度の医学祭ですが、前回はコロナ禍で、前々回は台風の影響で、いずれも部分開催となり、今回9年ぶりの完全開催となりました。両日合わせて約1万人の方に来場いただき、非常に盛況でした。幅広い年代層の方にキャンパスを訪れていただき、学生が設営したブースでの体験企画、キャンパスの雰囲気から医学部の取り組みを肌で感じていただくことができました。
テーマ「医風堂々」に込めた思い

今回の医学祭は「医風堂々」をテーマに据えました。医学知識にあまりなじみのない方々にとって、医学・医療という分野と生活を結び付けているのは、医療従事者との相互理解と、それに伴う信頼関係だと考えています。コロナ禍で露呈した通り、現代は有事の際にSNSを通じて多くの言説が飛び交い、根拠も不明な中で何を信じるべきかという大変難しい判断を迫られます。
いざという時に最も重要なのは、その「いざ」が来た時のために日頃から医療を信頼できるものと感じていただくことだと信じ、委員で協議の末、四字熟語の「威風堂々」をもじる形でこのテーマに決定しました。来場いただいた方からも好評で、運営を手伝ってくれた学生にとっても今後医療従事者として研さんを積む上で、一つ重要な言葉になるのではないかと感じています。
体験型企画で医療への理解と健康意識の向上促す


実際に行った企画について、いくつかご紹介します。特に整理券の人気度が高かったのは、外科医スキル体験でした。東北大学病院の外科医協力・監修の下、外科手術で使われる金物の展示や、ガウンテクニック体験、糸結び練習、電気メス試用、胸腔鏡体験などを行いました。参加いただいた方のうち、中高生からは「実際の医療現場をリアルに知ることができた」といった声を、他の年代の方からは「外科医はこんなに窮屈な姿勢を何時間も保っているとは知らなかった」といった声を頂きました。
病理企画「見えるぞ、がん細胞の正体!」も好評でした。がんに焦点を当て、病理診断学分野および皮膚科学分野の協力の下、がん細胞を実際に顕微鏡で見ることができるようにし、がんとは何か、病理医とは何者でどういった仕事をしているのかといった、病理学分野の普及・啓発につなげました。病理診断学分野教授の鈴木貴先生をはじめとする先生方による講演の時間も設け、地域の皆さまと先生方をより身近につなぐ役割を果たせたのではないかと感じています。参加いただいた方からも、「がん検診に行こうと思った」などの反応があり、日頃の健康意識への向上という面で非常に意義が大きかったと実感しています。
「学生と語ろう」という企画も人気を博していました。医学部・歯学部の学生と自由に対話する時間を設け、中高生の方が、保護者がいる前では話しづらいことを打ち明けてくれる場面も少なくなかったようです。普段近い距離に医学生・歯学生がいない方にとっても、医学部という環境への解像度を上げることのできる機会になったのではないでしょうか。将来医療従事者となる私たちにとっても、皆さまにとっても、お互いの見え方を知る良い機会になりました。
ほかにもぬいぐるみ病院や放射線技師クイズ、健口フェスタなど、20件ほどの企画を用意し、いずれも体験していただいた方にとても好評でした。
大学生という「はざま」の存在だからできること

大学生という立場は、最後のモラトリアムとも呼ばれるように、成人ではあるものの社会人とは見なされない、非常に微妙な位置にあると言えます。それは裏を返せば、未就学児および小中高生が少し背伸びをして私たちと触れ合うことで「大人の世界」への視界が開け、逆に私たちが少しかがんで目線を合わせれば同じ位置で話ができるということです。また、医学生は医学知識についてある程度難しい内容でも理解でき、本気で学んでいるからこそ、その難しさ、取っ付きにくさも理解できます。
世代、知識、さまざまな意味で社会的なはざまに立つ大学生は、すなわちその両側の立場に立つことができる柔軟かつ稀有な存在であると考えています。そうした私たちだからこそつくることのできる距離感を、医学祭を通じて、学生側も来場いただいた方々も、少しでも感じていただけたのなら、主催としてこれ以上の幸せはありません。
支えていただいた皆さんからのご恩をつなぐ

先生方や研究室の皆さん、ご支援くださった方々、何より来場いただいた方々が、とても優しく、温かく見守ってくださっているのを委員のみんなが感じました。手探りしながらの運営でしたが、本当にたくさんの方々の助けを得ることができ、そのどれもが不可欠だったと振り返って感じています。この場をお借りして、改めて深くお礼申し上げます。こうして社会の「助け合い」の部分に触れながらも、それに甘え過ぎることなく、ひたむきに自らを鍛える姿勢こそが、学生として必要なのだという気付きもありました。
現在、医学祭を3年置きではなく2年置きにしてはどうかといった議論を、後輩たちが中心となって行っています。今回、たくさんのご恩を受けた医学祭の幹部学年として、次の世代に何を残せるのか、逆に残し過ぎてはいないか、真摯(しんし)に向き合おうと考えています。
趙世源(ちょ せうぉん/Cho Sewon)
東京都出身。2021年東北大学医学部医学科に入学。第26回東北大学医学祭実行委員長。