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〔いのち)の可能性をみつめる

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ブックレビュー『痛いところから見えるもの』

頭木弘樹 著
文藝春秋、2025年

題名の通り「痛み」を扱った一冊。著者自身、人には想像しがたい痛みを長い年月抱えてきた。その体験を、文学の言葉を借りながら、誠実で平易に伝え、読者はその痛みを想像しながら読み進められる。本書は、著書のいう通り、まさに「痛い人と痛くない人のあいだに立つ本」として、両者をつなぐ。

痛みには孤独がつきまとう、と著者はいう。目に見えず、計測することも難しく、人に伝えようとすればするほど、かえって隔たりが深まることすらある。一方で、同じ痛みを知る者どうしには、不思議な共感や連帯が生まれることもある。また、痛みが創作の源泉となることもあれば、自分を守るための最後の砦となることもある――本書は、その痛みの多面性を示してくれる。

私は、人生で最も強烈だった“出産の痛み”を思い返した。あれほど圧倒的だったはずなのに、時間が経つほど輪郭が曖昧になる。同時に、あの痛みは、母たちの静かな連帯に触れた経験でもあった。それは“苦しみの体験”の共有ようなものではなく、もっと穏やかなものだったように思う。一方で、簡単に母性に置き換えられることにも違和感があるし、痛みのない分娩を選んだ人の経験もまた等しく尊い。どの選択にもその人の事情や判断があり、尊重されるべきものだ。本書は、そうした多様な経験を包み込む視点も与えてくれる。

痛みを遠ざけるのではなく、受け止め、言葉にし、誰かと分かち合おうとすること。そこには思っていた以上の救いがある。これからいつ訪れるともわからないさまざまな痛みと向き合うための、静かな支えとなる一冊である。

Text 溝部鈴
Photo 三浦晴子

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