TOHOKU MEDICINE LIFE MAGAZINE

東北大学医療系メディア「ライフ」マガジン

TOHOKU UNIVERSITY SCHOOL of MEDICINE + HOSPITAL

〔いのち)の可能性をみつめる

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ブックレビュー『誰にも相談できません みんなのなやみ ぼくのこたえ』

高橋源一郎 著
毎日新聞出版、2020年

ひとは、それぞれに固有の悩みを抱えている。じぶんの悩みはだれのものとも同じではなく、じぶんの悩みの苦しさは決して他人にはわからないという意味で、どこまでもじぶんごとである。にもかかわらず、ひとの悩みはどれも似ていて、同じような悩みの事例はあるのかもしれないし、じぶんとは無関係なはずのどこかの知らない誰かの悩みでさえ、なんだかじぶんにもわかるような気がしてしまうものでもある。ほんとうに不思議。なぜわたしたちは、これほどまでに一人ひとりまったく違っているのによく似ていて、似ているのにまるで違っているのだろうか。

恋愛のこと、夫婦のこと、家族のこと、仕事のこと、人生のこと。読者から寄せられたさまざまな悩みに小説家・高橋源一郎が答えてゆくという、5年間にわたって毎日新聞紙上で連載された人生相談コーナーから本書は生まれた。掲載された100の相談に付けられたタイトルは、たとえばこんな感じ。「夫以外の人を好きになった」「夫のすべてに悪寒が走る」「ブサイクって言わないで!」「母が妻につらく当たる」「就職決まらず、孤独で絶望」「義母の介護にやりきれない」「親が憎くて嫌いです」「父の不貞を恨む母の暴走が止まらない」「昔の恨みを許せない」……。これだけでなんだか怖くもあり、引き込まれそうでもあり、じぶんにも身に覚えがあるような気がしなくもないことに、ちょっとクラクラしてしまう。

それにしても秀逸な書名である。わたしたちは、誰にも相談できないような悩みを抱えて生きている。誰にも相談できないような悩みだけに、それを身近なひとにはなかなか相談できずに、その行き先はついにものすごくたくさんのひとの目に触れる新聞というマスメディアに行き当たる。そこに掲載される匿名の、年齢と性別だけが明かされた顔もなき誰かの、なにかしらすごいことになっている人生相談は、そこでみんなのものになる。その相談文に滲んでいる声に丁寧に耳を傾け、そこに書かれていない背景までも読み解こうとして、懸命に相談者への回答を示そうとする小説家の体を張った言葉は、その特異な生きかたや人生経験に基づく個人的見解でありながら、だからこそまたそれを読む読者の心に響いて、みんなの答えになっていく。

ひとは誰かに話を聞いてもらいたいと願いながら生きている。わたしたちはもっと耳を傾けなければならない。本書に掲載された相談は、あなたのもっとも身近にいながら声をあげられなかった誰かの、ようやく行き着いた場所だったのかもしれない。

Text 空豆みきお
Photo 三浦晴子