TOHOKU MEDICINE LIFE MAGAZINE

東北大学医療系メディア「ライフ」マガジン

TOHOKU UNIVERSITY SCHOOL of MEDICINE + HOSPITAL

〔いのち)の可能性をみつめる

TOHOKU MEDICINE LIFE MAGAZINE

TOHOKU UNIVERSITY SCHOOL of MEDICINE + HOSPITAL

〔いのち)の可能性をみつめる

くすりの使い方

薬剤部 眞野 成康

クリニックを受診して薬を飲み始めたけれど、体調が良くなったからと途中でやめてしまったことはありませんか?そのような薬をご自宅に保管していて、ご自身やご家族の体調がすぐれないときに、受診しないまま服用してしまうことはありませんか?医師が処方する薬は、ドラッグストアで市販されているものと異なり、効果の強いものが多いのです。医師の指示がないまま勝手に服用するのはとても危険ですし、他の人にあげてもいけません。また、薬は正しく保管しないと成分が変化してしまうこともあり、効き目がなくなるだけでなく、体に悪影響を及ぼすこともあります。

「くすり」を反対から読むと「リスク」になります。薬は本来体の中にないもので、体にとっては異物です。しかも体の中でさまざまな作用をもたらします。調子の悪いところに作用して改善してくれるときには「くすり」として働きますが、効いてほしいところとは別のところで強く作用をもたらすこともあります。年を取ると、白髪になったり、耳が遠くなったりと体のあちこちに衰えを感じるものです。内臓の機能も同じです。薬のように本来体の中にないものを取り込むと、体はそれを無毒化するために肝臓で代謝し、腎臓から尿に排泄します。肝臓や腎臓の機能も加齢とともに低下しますので、高齢者の体の中での薬の動きは、若い人とはかなり違います。また、複数の薬を同時に服用している患者さんもいらっしゃると思いますが、この場合も注意が必要です。飲み合わせによっては効かなくなったり、逆に作用が強く表れすぎたりすることもあります。これは気軽に取れるサプリメントで起こることもあるのです。入院するときに病室で薬剤師が、「サプリメントや健康食品を使っている場合はすべてお知らせください」とお声がけするのはそのためです。

最近は効き目が強く、使い方が複雑な薬も多くなりました。朝起きてすぐに服用するもの、食前に服用するもの、食後に服用するもの、食事と食事の間に服用するもの、寝る前に服用するもの、1日1回、1日3回、週に1回、2週に1回…。服用方法もさまざまで、組み合わせは無数にあります。たくさんの薬を使うほど、服薬管理も複雑になります。医師は、患者さんの体の状態を考えながら、薬の服用量や服用方法を調節していますので、医師の指示通りに服用することが大切です。飲み方が複雑で、正しく飲むのが難しいと感じる場合には、薬剤師に相談してください。

花粉症の薬を飲んだら眠くて仕方がない、と思ったことがある方は多いと思います。花粉症の症状のせいで眠くなることもありますが、薬のせいで眠くなるのは副作用のためです。副作用の対処方法については、薬局で薬剤師が指導してくれると思います。また、薬を飲み始めて少したってから、薬局の薬剤師が電話をかけてきて、副作用で困っていないか、ちゃんと薬を服用できているか確認された、という経験がある方もいらっしゃると思います。がんの治療ではさまざまな副作用が予想され、それらを予防するための薬もたくさん服用しますので、がん患者さんで特に経験することかもしれません。副作用を上手にコントロールして、できるだけ効果の高い治療を継続することが、がんの治療にとって大切だからです。治療を始めるときにさまざまな説明や指導を受けていると思いますが、副作用の中にはすぐに受診した方がいい症状もあります。医師、看護師、病院の薬剤師、薬局の薬剤師が連携して患者さんの治療をサポートします。特に、薬について分からないこと、不安なことがありましたら、遠慮なく薬剤師に相談してください。

眞野 成康
(まの なりやす)

1966年生まれ。新潟県出身。1989年東北大学薬学部卒業、1991年同大学院博士課程前期2年の課程修了。1998年薬学博士。エーザイ株式会社、東北大学大学院薬学研究科臨床分析化学分野を経て、2007年より東北大学病院教授、薬剤部長。

※東北大学病院広報誌「hesso」39号(2023年8月31日発行)より転載

関連リンク
東北大学病院広報誌「hesso(へっそ)」

「生命のつながり」と未来へのまなざし(前編)

「生命のつながり」と未来へのまなざし(後編)

《Creation》 宮田敏男

人の想いを傾聴する「臨床宗教師」のこと。