生活習慣を見直し 血管をしなやかに
循環器内科 安田 聡
2025.3.27 Thu
心筋梗塞は心臓に栄養を供給する血管・冠動脈が動脈硬化を起こし、それが進行することで発症します。そして、動脈硬化の進行には生活習慣が深く関わっています。
6ページの生活習慣チェックにあげられている7項目は、全て動脈硬化を進行させやすい生活習慣です。当てはまる項目が多ければ多いほど、 動脈硬化が進行しやすく、心筋梗塞を起こす危険性が高くなります。
いろいろある動脈硬化の危険因子の中で、最も影響が大きい因子の一つが肥満です。 肥満は脂肪の付く部位によって、二つのタイプに分けられます。一つは皮膚の下に脂肪が蓄えられる皮下脂肪型肥満で、もう一つが内臓の間に脂肪が蓄積される内臓脂肪型肥満です。脂肪の蓄積される部位が違う二つのうち、動脈硬化や心筋梗塞と密接な関係にあるのは、内臓脂肪型肥満です。
なぜなら、内臓脂肪があると、糖尿病や高血圧になりにくくする物質の分泌が少なくなってしまうからです。そのため、内臓脂肪型肥満がある人は、糖尿病や高血圧を発症しやすくなってしまいます。内臓脂肪型肥満かどうかは、BMIと腹囲から判定することができます。まず、身長と体重からBMIを算出し[体重〈kg〉÷(身長〈m〉× 身長〈m〉)で割り出す]、25以上ならば肥満と判定されます。さらに、内臓脂肪型肥満かどうかは、へその位置で腹囲を測って判定します。男性は85cm以上、女性は90cm以上の場合に、内臓脂肪型肥満の可能性が高いと考えます。特に内臓脂肪型肥満の人は糖尿病になりやすいので、これにも注意が必要です。また、喫煙やストレスも動脈硬化を進行させる原因となります。
心筋梗塞の予防では、食生活も非常に重要です。たとえ肥満ではなくても、食生活に問題があれば、血中脂質に影響が表れ、それが動脈硬化を進行させる原因になってしまうからです。肉ばかりではなく、魚も食べるようにすると良いでしょう。魚を週に2~3回食べることで、動脈硬化の進行が抑えられ、心筋梗塞の予防につながります。
毎日バランスの取れた食事をするのが良いのですが、なかなか実現できません。そこで、1週間単位でバランスを取ることを目指すのはどうでしょうか?例えば、肉の脂を多く取ってしまう日もあれば、エネルギー過多になってしまう日もあるでしょう。しかし、野菜を多めに取る日や、エネルギーを抑えた日をつくることで、1週間はバランスが取れているようにするのです。
生活習慣チェックの7項目は、心筋梗塞予防のための七か条に作り替えることができます。
①適度に体を動かす生活 ②血糖値を正常に保つ ③健康的なコレステロール値維持 ④血圧管理 ⑤標準体重維持 ⑥健康的な食生活 ⑦禁煙
この七か条はいずれも動脈硬化の進行を抑えることができ、心筋梗塞の予防に役立ちます。
通勤や散歩での歩行は、軽度の運動で強度が足りません。適度な運動として勧められるのが、20分程度のウォーキングなど、中等度以上の強度の運動です。これを週に3回以上行います。継続することが大事です。また、健康的なコレステロール値を維持するためには、LDLコレステロール値を上げる食品を避けることです。摂取するコレステロールの量よりも、脂肪の質が問題なのです。飽和脂肪酸やトランス脂肪酸といった、体にとって良くない働きをする脂肪酸が含まれている食品は、取りすぎないよう注意する必要があります。
40歳を過ぎた人には、体重と血圧を毎日測定し、それを記録しておくことを勧めています。高血圧も肥満も、狭心症や心筋梗塞を引き起こす動脈硬化を進行させる危険因子です。血圧と体重の変化を毎日見ていくことで、動脈硬化を進行させ得る状態に早く気付き、生活を見直すことができます。また、体重を管理することで肥満の予防にも役立ちます。
安田 聡
(やすだ さとし)
1987年東北大学医学部卒業。米カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部研究員、東北大学大学院医学系研究科循環器内科学准教授、国立循環器病研究センター副院長などを経て、2020年より東北大学医学系研究科循環器内科学分野教授・東北大学病院循環器内科科長に就任。
※東北大学病院広報誌「hesso」47号(2024年12月25日発行)より転載
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- 東北大学病院広報誌「hesso(へっそ)」