息切れし、せき、たんが出るCOPD
呼吸器内科 科長 | 杉浦久敏
2025.5.30 Fri
40歳超の喫煙者 検査を
「息切れ」は呼吸器内科を受診する患者さんが訴える、最もポピュラーな症状の一つです。多くの呼吸器疾患は病状が進行すると息切れ症状を伴います。一方で、主訴が息切れ症状であっても、その原因は必ずしも呼吸器疾患に限らず、全身疾患を含めて多岐にわたります。うっ血性心不全や貧血、肥満、不安神経症などの心因的な原因でも息切れを感じます。
各専門科が連携
われわれは問診、理学的所見、そして種々の画像検査や呼吸機能検査、血液検査などを駆使して鑑別診断を行います。東北大学病院では各専門科が連携しており、呼吸器以外の疾患が見つかった場合でもスムーズに適切な診療を受けることが可能です。
患者さんが「息切れ」と表現した際に、安静時の症状か、体動時の症状かを問診します。安静時の呼吸困難であれば、より重篤な疾患や状態を想定します。次に、症状が突然の発症か、あるいは慢性症状かによって、鑑別する疾患が異なります。
では、息切れ症状を呈する呼吸器疾患にはどのようなものがあるでしょうか?
代表的疾患は、慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)です。もちろん、間質性肺炎や肺がん、ぜんそくなどでも息切れ症状を感じますが、40歳以上の喫煙者で慢性的な息切れやせき、たんを自覚する場合はCOPDを疑い、医療機関を受診する必要があります。
COPDは、気管支が狭くなることでスムーズに息を吐くことができず、体動時に肺内に空気が残存し呼吸が苦しくなります。まさしく体動時の息切れ症状の代表的疾患と言えるでしょう。診断するためには肺機能検査が必須となりますので、症状が軽い状態でも検査を受けることをお勧めします。
COPDの治療では、適切な気管支拡張薬を使用することで症状や予後が改善します。またCOPD患者の25%はぜんそくを合併しています。この場合には吸入ステロイド薬と気管支拡張薬を併用します。さらに最近では最適な治療にもかかわらず、頻回の増悪を来す一部の症例に対して生物学的製剤の使用が承認されています。
多数の潜在患者
COPDは緩やかに進行する疾患のため、息切れを感じる患者さんの多くは「年のせいかな?」と考えてしまいがちです。潜在的患者数は500万人以上とも言われています。老化関連疾患でもあることから、超高齢化が進むわが国においてますます対策が重要になります。
適切な診断と治療を行うことで健康寿命の延伸が期待できるので、息切れ症状を感じた場合は、ぜひ当病院呼吸器内科を受診していただければと思います。
河北新報掲載:2021年9月10日
一部改訂:2025年5月30日

杉浦 久敏
(すぎうら ひさとし)
三重県出身。1993年東北大学医学部卒業。東北大学第一内科、米国ネブラスカ大学メディカルセンター研究員、和歌山県立医科大学第三内科を経て、2020年に東北大学大学院医学系研究科呼吸器内科学分野教授に就任。