歯を残せる可能性上昇

人工骨など活用

　「最近、歯茎が腫れている気がする」「歯が浮いたような違和感がある」「歯磨きのたびに血が出る」…。こんな症状を見逃していませんか？　これらは歯周病の初期サインかもしれません。

　歯周病は、歯垢（しこう）に潜む細菌が歯茎に炎症を引き起こし、進行すると歯を支える骨を破壊する病気です。初期段階では症状が少なく、気付いたときにはかなり進行していることも少なくありません。

　これまでの歯周病治療では、細菌を除去し炎症を抑えることで進行を食い止めることはできても、一度失われた骨を元に戻すことは困難でした。そのため、歯周病が悪化すると抜歯が避けられないケースも多かったのです。

　しかし近年、「歯周組織再生療法」の進歩により、進行した症例でも失われた骨を再生することが可能となってきました。この治療では、特殊な薬剤や人工材料を活用し、歯槽骨の再生を促します。

　現在、代表的な治療薬として「リグロス」や「エムドゲイン」があり、歯茎内部に注入することで、骨の再生能力を高めます。さらに、骨補填（ほてん）剤という人工骨を併用することで、より効率的な骨再生が期待できるようになっています。

　最近ではさまざまな症例に対応できる骨補填剤が開発され、患者さんの状態に合った治療が可能になりました。これにより、再生療法の成功率も向上し、以前は抜歯しか選択肢がなかったケースでも、歯を残せる可能性が大きく高まりました。

多くは自由診療

　歯周組織再生療法は高度な技術と特別な材料を使用するため、多くの場合、自由診療となります。保険適用外の治療となることが多いため、治療費は医院によって異なります。治療を受ける際は、事前に費用や治療内容について歯科医師としっかり相談することが肝心です。

　どんなに治療法が進化しても、歯周病を予防することが最も大切です。毎日の歯磨きを丁寧に行うのはもちろん、定期的な歯科検診で歯石や歯垢を除去し、口腔内の健康状態をチェックすることが欠かせません。

　早期発見・早期治療こそが、大切な歯を守る最良の方法です。毎日のケアと定期的なチェックを習慣にして、健康な歯を一生守りましょう！

根本 英二
(ねもと えいじ）

東京都出身。1989年東北大学歯学部を卒業。南カリフォルニア大学、ワシントン大学にて客員研究員として勤務。2011年歯内歯周治療学分野准教授に就任。専門は歯周病学。