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〔いのち)の可能性をみつめる

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子どものけいれん 

小児科 准教授|植松貢 

5分超えたら救急搬送

 子どもに起こるけいれんのほとんどは脳が原因です。それは例えば心臓で言うと、不整脈の発作のようなものです。 

 脳の中で異常な電気活動が起こり、さらにそれが脳全体に燃え広がって火事になってしまうと、意識を失って顔色が悪くなり全身がピクピクする「全身けいれん発作」が起こります。目の前で起きたら本当にびっくりしますが、ご安心ください。脳には火事が起こったら自分で消火するスプリンクラーのような機能が備わっているため、多くは5分以内で自然にけいれん発作は止まります。そのまま呼吸や心臓が止まることはまずありません。

熱の有無確認を

 お子さんにけいれんが起きたらまず、「熱があるかどうか」で分けて考えましょう。

 熱がある子どものけいれんで最も多いものは「熱性けいれん」と呼ばれるもので、多くは38度以上の発熱の際に、全身けいれん発作が起こります。ほとんど5分以内に自然にけいれん発作は治まり、その後は脳が疲れて眠ってしまいます。そして数時間後に目が覚めた時には、いつものお子さんに戻っていることでしょう。

 しかし、次のような場合にはすぐに病院を受診しましょう。(1)けいれん発作が5分以上続いている(2)一度けいれん発作が治まったと思ったら、またけいれんした(3)右手足だけなど、部分的なけいれん発作(4)数時間以上たっても普通に目が覚めない。上記のような場合、脳の中に脳炎や脳症と呼ばれる強い炎症が起こってけいれん発作が止まりにくくなっている可能性があり、専門的な治療が必要です。

 熱のないけいれんの原因では「てんかん」が有名です。てんかんの中にはさまざまな種類があり、自然に良くなるタイプも多く緊急性は少ないです。治療法もタイプによって変わりますので、専門の医師に正しく診断してもらうことをお勧めします。他にも、泣き入りひきつけ、ホルモンや電解質の異常など、熱のないけいれんにはさまざまな原因があります。

口に物を入れない

 けいれんは自然に止まることがほとんどです。あおむけに寝かせて、吐いたものが喉に詰まらないように顔を横に向け、衣服を緩めて呼吸しやすいようにします。時間を見つつ発作の様子を観察しながら止まるのを待ちましょう。舌をかまないようにと口の中に物を入れると、逆に窒息の原因になりますのでやってはいけません。5分たってもけいれん発作が止まらなければ救急車を呼んで病院を受診しましょう。

河北新報掲載:2021年11月15日
一部改訂:2025年7月11日

植松 貢
(うえまつ みつぐ)

仙台市出身。1994年自治医科大学卒業。へき地勤務の後に2004年より東北大学病院にて小児神経疾患の診療に従事。米国ミシガン小児病院神経科研究員などを経て、2019年より現職。