食事の時にむせませんか?
香取幸夫(東北大学病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科 科長)
2025.8.29 Fri
高齢者、誤嚥防ぐ工夫を
肺炎の危険増す
食事や話をする時にむせやすくなっていませんか。そのような方は飲食物や唾液が呼吸の通り道に誤って入る「誤嚥(ごえん)」を起こしやすくなっています。誤嚥した物をせきと共に出せないと、肺炎の原因になります。
誤嚥による肺炎は、「何となく元気がない」「汚れたたんが増える」「微熱が続く」といった慢性症状で始まることが多く、慢性的な消耗や呼吸障害を繰り返します。高齢者に多い死因の一つです。
なぜ高齢者で誤嚥が増えるのでしょう。私たちは水分や食べ物をかんで喉に運ぶと、喉と脳の嚥下(えんげ)反射により自然と「ごっくん」して食道から胃へと運びます。加齢により喉の感覚が鈍くなると、嚥下反射も飲み込む筋力も低下し、誤嚥を起こしやすくなります。
正常な人は誤嚥した時にむせ、食べ物や水分を吐き出します。しかし、加齢によってせきの反射や、呼吸の力が低下すると、十分に吐き出せずに肺炎の危険が増します。
誤嚥性肺炎の予防には、(1)口の衛生(2)義歯の調整(3)口や喉、呼吸の訓練(4)食べ物と食べ方の工夫-が有効です。食後や就寝前には、歯磨きやうがいをして口をきれいにしましょう。食べ物を唾液と混ぜてかんで、飲み込みやすくするためには義歯の調整も大切です。
よく声を出そう
誤嚥を減らす喉の訓練としては、額や顎の下を押して抵抗をかけながら顎を引く方法があります。よく声を出すことも、舌と喉、呼吸の筋肉の働きを保ち、誤嚥予防に役立ちます。積極的に話し、歌いましょう。
高齢でむせやすい方は、食べ物と食べ方の工夫が必要です。食べ物は滑らかに、まとまりよく調理すると、誤嚥しにくくなります。水分は誤嚥しやすいため、市販の増粘剤を用い適当なとろみをつけましょう。とろみをつけ過ぎると飲みにくく、喉に残りやすいので注意が必要です。
食事の際は机と椅子の高さを調整し、足を床に着けてきちんと座った状態にし、食事中に顎が上がらない姿勢になるようにします。顎を軽く引いた状態で食事をすると誤嚥を防いで安全に食べやすくなります。
むせやすい、食べにくいと感じた方は耳鼻咽喉科で口と喉の診察を受けて、誤嚥を防ぐ相談をすることを勧めます。いつまでも元気でおいしく食事を続けましょう。
河北新報掲載:2025年6月13日
香取 幸夫
(かとり ゆきお)
東京都出身。1994年東北大学大学院医学研究科修了、英国キール大学に留学し、岩手県立宮古病院、仙台市立病院勤務などを経て、2013年より東北大学大学院医学系研究科耳鼻咽喉・頭頸部外科科長に就任。2014年栄養サポートセンターセンター長、2019年嚥下治療センターセンター長に就任。