急な尿意と尿漏れ、過活動膀胱かも
川守田直樹(東北大学病院 泌尿器科 准教授)
2025.9.12 Fri
薬と生活習慣改善、有効
高齢者で増える
帰宅してドアの鍵を開けようとすると急激な尿意に襲われ、トイレに慌てて駆け込む。たまに失敗-。このような経験はないでしょうか? それは過活動膀胱(ぼうこう)かもしれません。
膀胱には尿をためる蓄尿と、尿を出す排尿の機能があり、自律神経により無意識にコントロールされています。膀胱が過剰に反応し、急な尿意や尿漏れなどを引き起こすのが過活動膀胱です。
わが国での2023年の疫学調査によると、高齢になるほど過活動膀胱の症状を感じる割合は増える傾向にあり、20代では5%未満なのに対し、70代では30%程度まで増えます。また、高齢では男性の割合が高くなります。
脳梗塞など神経疾患に関連する神経因性過活動膀胱や、膀胱炎や膀胱結石、膀胱がんなどが引き起こす2次的過活動膀胱は、それぞれ関連する病気の専門医での治療が必要です。ただ、これらは過活動膀胱のうちの10%未満しかなく、多くは加齢に伴い発症するとされます。では、高齢でも症状が出る人と出ない人がいるのはなぜでしょうか。
メタボも関連か
近年、膀胱の細かな血管障害が過活動膀胱に関連していることが分かってきました。高血圧や脂質異常症、糖尿病などがあると毛細血管に障害が生じやすく、それらを伴ういわゆるメタボリック症候群の人は、頻尿や尿意切迫感などの症状が多いといった疫学調査もあります。
有効な薬が主に2種類ありますが、効果は同等でも、副作用など異なった特徴もあります。内服する場合はかかりつけの先生と相談するといいでしょう。
普段の行動・生活習慣を変えることにより症状改善を目指す行動療法の有効性も証明されています。その代表は減量です。また、定期的な運動、禁煙、カフェインや炭酸飲料の摂取の見直しも有効とされます。すべてメタボの改善にも効果がありそうですね。薬との併用がより効果的です。
尿意には尿量のみならず、気温の変化、食事も影響します。そのため、異常かどうかは数値で決められません。膀胱にはまだ十分に分かっていない部分も多くあり、意外に奥深い臓器とも言えます。「急な尿意と尿漏れ」が気になり、メタボの自覚もあるなら、生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか。
河北新報掲載:2025年6月27日

川守田 直樹
(かわもりた なおき)
青森県出身。東北大学医学部博士課程修了、米国ピッツバーグ大学博士研究員を経て、2024年より東北大学病院泌尿器科准教授。