アトピー性皮膚炎の治療
高橋隼也(東北大学病院 皮膚科 助教)
2025.9.19 Fri
原因除去し保湿、薬使用
アトピー性皮膚炎はかゆみを伴う湿疹を繰り返す慢性の皮膚疾患で、アトピー素因(複数の遺伝的要因)と環境要因(後天的な悪化因子)が複雑に絡み合って発症します。
「3本柱」が基本
治療の基本は、悪化因子の除去、スキンケア、適切な薬物療法という「3本の柱」をバランスよく行うことです。
悪化因子はダニやカビ、ペットの毛、化粧品やスキンケア用品、金属、食べ物、汗や衣服の擦れ、生活習慣の乱れなど多岐にわたります。全てに完璧な対策を行うことは不可能ですので、生活を見直し、特に悪いと思われるものから順に対策することを勧めています。悪化因子の除去により、症状がひどくなる原因を減らすことができます。
スキンケアでは乾燥肌への対策として、保湿剤の適切な使用はもちろん、入浴法や体の洗い方を見直すことも重要です。特に冬は乾燥肌がひどくなりやすい季節です。しっとりした肌にすることで、外からの刺激に対するバリアー機能を回復し、かゆくなりにくい、刺激を受けてもひどくなりにくい状態にすることができます。
薬物療法は起きてしまった炎症、かゆみを抑えるもので、ステロイドの外用薬(塗り薬)が基本です。「きちんと薬を塗っています」と言う患者さんでも、実際には塗る量が足りないことが多いです。薬のチューブから人さし指の第1関節分の長さを絞り出して、手のひら二つ分の皮膚に塗るのが適量です。
また、回数や使う部位を守ることも重要です。強く擦り込むとかえって刺激になり、塗った後にかゆみが増すので勧められません。以前は症状がひどい時だけ薬を塗り、よくなったら休む-という使い方が主流でしたが、症状がぶり返しやすくなる(塗っているうちはよいが、休むとすぐ悪くなる)ため、現在は症状が落ち着いてもすぐに外用をやめず、ゆっくり減らす塗り方が勧められています。
分子標的製剤も
最近、アトピー性皮膚炎のかゆみや炎症を引き起こす分子を阻害する「分子標的製剤」という新しい薬が大きな効果を上げています。標準治療での改善が不十分な患者さんに対し、標準治療に加えて使用することになっています。現在、注射薬4種、内服薬3種、外用薬3種が使用でき、新薬も開発されています。
いずれにせよ、これさえやればアトピー性皮膚炎が治るという「必勝法」は残念ながらありません。今ある症状に一喜一憂せず、かかりつけの専門医と相談しながら根気よく治療に取り組むことが大切です。
河北新報掲載:2022年1月28日
一部改訂:2025年9月19日
高橋 隼也
(たかはし としや)
岩手県出身。2005年東北大学医学部卒業。山形市立病院済生館で初期研修後、2007年東北大学病院皮膚科入局。米国カリフォルニア大学サンディエゴ校留学などを経て、2023年東北大学病院皮膚科講師。専門はアトピー性皮膚炎、アレルギー、膠原病。