腹痛、下痢繰り返す炎症性腸疾患
角田洋一(東北大学病院 消化器内科 准教授)
2025.10.3 Fri
がんリスク、血便に注意
炎症性腸疾患は腹痛や下痢などを繰り返す慢性の腸炎で、一般的には潰瘍性大腸炎とクローン病という二つの難病を指します。ここ数十年の間に患者さんが急激に増え続けて、最近では30万人を超えるなど、難病ながら意外と身近な存在です。
若い世代で発症
どちらの病気も若い時(10~30代)に発症することが多いですが、潰瘍性大腸炎は高齢で発症することもあります。どちらも慢性の腸炎ですので、繰り返す腹痛や下痢などが主な症状ですが、大部分の潰瘍性大腸炎の患者さんでは血が混じった便(血便)が出ます。クローン病には典型的な症状がなく、おなかをすぐ壊したり、栄養状態が悪く痩せてしまったり、肛門の周りに強い炎症(腫れなど)が出ることがあります。
便に血液が混じっている場合、通常であればまず悪い病気を疑わないといけませんので、大腸がんの可能性を考えて一度は大腸の内視鏡検査をすることをお勧めします。ただ、若い人は大腸がんよりも「痔(じ)かな?」と思って放置することが多いかもしれませんが、繰り返し血便が出る場合は潰瘍性大腸炎の可能性があります。また、仮に痔があったとしても、それが非常に治りにくい場合や、何度も繰り返し悪化する場合は、クローン病の可能性もあります。
薬で抑制 切除も
潰瘍性大腸炎の大部分の患者さんは基本的な薬(メサラジン製剤)や座薬などで炎症を抑えることが可能です。一部の患者さんでは基本治療でなかなか炎症がコントロールできず、抗体製剤や免疫調節剤などによる治療が行われることもあります。しかし、どうしても治療の効果が出ない場合は、体調が悪くなり過ぎないうちに大腸を切除(手術)することも重要です。腸炎が長い期間持続すると大腸がんの危険性が高くなるため、早めに見つけて治療することも重要です。
クローン病は、以前は効果的な薬がなく入院を繰り返すことが多かったのですが、2000年代に入ってからは抗体製剤が使えるようになり、外来治療で炎症がコントロールできるようになってきています。クローン病は、炎症が抑えられないと、腸が狭くなったり穴が開いたりして手術で腸を切除する必要が出てきます。なるべく早い時期からしっかりと治療を行い手術を回避することで将来的に腸に残るダメージを少なくできます。
残念ながらいずれの病気も完治するということはありませんが、炎症が落ち着いている状態が維持できれば健康な時とほぼ同じ日常生活を送ることも可能です。そのためにも、病気を早めに見つけて、治療を続けていくことが重要です。
河北新報掲載:2022年4月22日
角田 洋一
(かくた よういち)
青森県出身。2000年東北大学医学部卒業。八戸市立市民病院、十和田市立中央病院を経て東北大学消化器内科に入局。2008年東北大学大学院医学系研究科博士課程を修了後、米国シダーズサイナイ医療センターの留学を経て2013年東北大学病院消化器内科助教、2025年より現職。