膵臓がんの早期発見は可能?
粂潔(東北大学病院 消化器内科 講師)
2025.12.19 Fri
血液検査、新項目に期待
症状なく進行も
皆さん、膵臓(すいぞう)という臓器をご存じでしょうか。胃の後ろにひっそり隠れていて、食べ物を消化する酵素やインスリンをつくる大切な働きをしています。膵臓がんは、早い段階ではほとんど症状がなく、気付いた時には進行していることが多い病気です。
近年の研究で、膵臓がんのごく初期から、くびれのような局所的な萎縮が膵臓に現れることが分かってきました。しかし、膵臓がんの生涯発症リスクは1.6%とされ、全ての一般の方にCTなどの画像検査を行うのは現実的ではありません。リスクの高い人をうまく拾い上げる方法として簡便な血液検査が大切です。
血液検査で調べる「腫瘍マーカー」は、がん細胞がつくる物質や、体が反応して変化した値を測定し、がんの存在を推測する手がかりとなります。
膵臓がんで代表的な腫瘍マーカーが「CA19-9」と「CEA」です。特にCA19-9は多くの膵臓がんで上昇し、診断や治療効果の判定、再発チェックに利用されます。CEAは胃や大腸のがんなどで使われ、膵臓がんで高くなることもあります。ただし、これらは早期では異常が出にくいという課題があります。
また、膵臓がんができると膵液や胆汁の流れが妨げられ、アミラーゼやリパーゼなどの膵酵素や、ビリルビン、肝機能の値が上昇することがあります。ただやはり、早期には変化が乏しいのが実情です。
変化を捉え察知
そこで近年、「アポリポたんぱくA2(APOA2)アイソフォーム」を調べる新たな血液検査が導入され、昨年から保険適用となりました。APOA2には重鎖、中間鎖、軽鎖の3タイプが存在します。同じたんぱく質の長いままのもの、少し切れたもの、さらに短く切れたものと考えると分かりやすいでしょう。
膵臓がんで膵管が狭くなると酵素が血液中に漏れ出し、APOA2が切断され軽鎖型が増えます。一方、膵臓が荒れて酵素が少なくなると重鎖型が増えます。いずれの場合も中間鎖が減少するため、この変化を捉えることで、膵臓の異常を早期に察知できると考えられています。
CA19-9と組み合わせると、ステージ1以下の膵臓がんでも44~63%を検出できると報告されており、膵臓がんの早期発見に役立つことが期待されます。
河北新報掲載:2025年10月10日
粂 潔
(くめ きよし)
和歌山県出身。1996年に東北大学医学部を卒業。仙台市立病院、宮城県立がんセンター勤務などを経て、2002年に東北大学病院消化器内科に入局。2012年東北大学病院消化器内科助教、2020年から現職。