進む遺伝性疾患研究
青木洋子(東北大学病院 遺伝科 科長)
2025.12.26 Fri
家族のリスク把握にも
最近は「遺伝子」「ゲノム」「DNA」などの言葉を目にすることが多くなりました。医療とは関係ない商品の広告などでも「○○のDNA!」などという文字を見ることもあります。ヒトの遺伝情報が明らかになってから、その情報を用いた遺伝性疾患の研究が進んできました。
専門部門 全国に
近年は遺伝性疾患や遺伝子が発症に関わる病気を専門にする診療科、部門が全国の病院にできてきています。東北大病院では、遺伝性疾患や遺伝子診断を行うに当たってさまざまな診療科が集まって「遺伝子診療部」という部門をつくって対応しています。臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーなど、高度な遺伝子診療を担当する専門職の養成も行っています。
「私の親ががんになったのですが、遺伝しますか?」といった質問をよく聞きます。遺伝性のがんは全体の5~10%と言われています。がんは一般に喫煙、飲酒、食事などの環境要因と、遺伝的要因が関係して起こりますので、家族や血縁者が罹患(りかん)した場合でも、全ての人がなりやすくなるわけではありません。家族の中で同じような生活習慣がある場合には、まずそれを見直してみるのも良いかと思います。
遺伝性のがんとして最近注目されているのは乳がんです。乳がんの約5~10%が遺伝性のタイプと言われています。遺伝性のタイプは、乳がんや卵巣がんになりやすい遺伝子の変化を生まれながらにして持っていて、そのような体質が次世代に50%の確率で引き継がれていきます。
40代以下で発症する、片方の胸に複数のがんができる、両方の胸にできるような乳がんのタイプである場合、「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群」が疑われます。近い血縁者に乳がん、卵巣がん、膵臓(すいぞう)がん、前立腺がんなどになった方がいる場合も当てはまります。
最近は乳がん、卵巣がんにかかった方で一定の基準に合致すれば、保険診療で遺伝学的検査を受けることが可能になりました。もし遺伝子の変化があれば本人の治療に利用するほか、家族のリスクを知ることも可能になります。気になる方はまずは主治医に相談してみてください。
原因や体質追究
ヒト遺伝の研究はこの20年で大きく進歩しています。最近は、ヒトの遺伝情報を全て解析して、病気の原因や体質を明らかにしようという研究も進んできました。通常の医療の中で診断に至るのが困難な遺伝性疾患の原因を調べるための国のプロジェクト(未診断疾患イニシアチブ)も行われています。「遺伝」を正しく理解して健康管理に役立てていくことができる時代が近づいています。
河北新報掲載:2022年7月8日
一部改訂:2025年12月26日
青木 洋子
(あおき ようこ)
山形県出身。1990年東北大学医学部卒業。同年岩手県立中央病院小児科にて初期研修。1996年米国ハーバード大学マサチューセッツ総合病院へ留学。2000年に医学系研究科遺伝病学分野の助教、准教授を経て、2015年より医学系研究科遺伝医療学分野教授 東北大学病院遺伝科科長に就任。