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〔いのち)の可能性をみつめる

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歯は健康のバロメーター

齋藤正寛(東北大学病院 先端歯科医療センター センター長)

全身の病気と密に関連

心身疲労も影響

 歯や口の健康は、体全体の健康と深くつながっています。虫歯や歯周病といった代表的な病気は、昔から「歯磨きを怠って歯垢(しこう)がたまると歯や骨が溶ける」と説明されてきました。もちろん毎日の歯磨きはとても大切ですが、最近の研究で、体の調子が悪くなると歯の病気も進みやすいことが分かってきました。

 反対に、口の状態が悪いと心臓病や糖尿病、内臓疾患といった全身の病気にも影響することが明らかになっています。そのため、国を挙げて歯科健診を広げ、予防を重視する国民皆歯科検診の取り組みが進められています。

 日常生活の中で、私たちは知らず知らずのうちに歯を強くかみしめることがあります。特にストレスや疲れがたまっていると、寝ている間や仕事中に「食いしばり」をしてしまうことが少なくありません。こうした習慣は歯が欠けたり折れたりする原因となるだけでなく、虫歯や歯の根の炎症、歯周病を悪化させます。

 慢性的な疲労は体を炎症が起きやすい状態にするため、治療を受けても治りにくくなることがあります。歯の健康が、心身の疲れや生活の質と密接に関わっていることがうかがえます。

 また、歯を支える顎の骨は炎症に弱く、全身の病気の影響を受けやすい場所です。糖尿病や免疫の不調があると炎症が強まり、骨が溶けやすくなります。

定期的に受診を

 さらに体のどこかで炎症が起きていると、顎の骨も反応しやすくなり、そこに虫歯や歯周病の菌が入ると炎症が悪化して骨が破壊されてしまいます。つまり歯の病気は単なる歯磨き不足ではなく、全身の病気や不調によっても悪化することがあるのです。

 歯を守るには、定期的な歯科健診が基本です。その上で、ストレスをためない生活や十分な睡眠を心がけることが大切です。食いしばりにはマウスピースの使用や、肩や首のマッサージなども有効とされています。持病がある人は、まず体の病気をしっかり治療しながら、歯科医院での治療とケアを並行して行うことが欠かせません。

 歯と体の健康は切っても切れない関係にあります。毎日の歯磨きや生活習慣の工夫、そして歯科医院での定期的な受診を続けることが、健康で充実した人生を支える大きな力になるのです。

河北新報掲載:2025年10月24日

齋藤 正寛
(さいとう まさひろ)

米国ニューヨーク州出身。1989年神奈川歯科大学卒業。ワシントン州立大学研究員、大阪大学、東京理科大学を経て、2013 年より東北大学歯学研究科歯科保存学分野教授、2022年より東北大学病院副病院長就任。2024年5月より現職兼任。

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