高齢者に多いドライマウス
佐藤しづ子(東北大学病院 口腔内科リエゾンセンター 副センター長)
2026.2.13 Fri
食欲不振、低栄養リスク
さまざまな原因で唾液の分泌量が低下し、口が乾燥する病気がドライマウスです。高齢者は加齢現象としての唾液腺(唾液を作る組織)の萎縮や、全身疾患の治療薬数が多いために薬の副作用で生じやすいと言われています。一方、ストレス社会を背景に若い人にも見られます。
口の自浄力喪失
唾液はペルオキターゼ、システイン、ヒスタチンなどさまざまな抗菌物質、傷を治す成分、鎮痛物質、免疫グロブリン、細胞成長因子などたくさんの有用物質を含んでいます。唾液は口の中を常に洗い流していますが、ドライマウスでは、その自浄力が失われて歯の根元に食物のかすやプラーク(歯垢(しこう))がたまって虫歯や歯周病が生じたり、悪化したりします。
カンジダという白いコケのような物が付着したり、口の中が荒れたりすることもあります。
食べ物は唾液によって味センサーに運ばれるので、味覚障害が生じることもあります。口の中がカサカサに乾燥するため、話しにくくなったり、乾いた食べ物を食べにくくなったりします。食べ物ののみ込みづらさも起きます。
口の荒れによる痛みや味覚障害による食欲不振も加わり、ドライマウスのある高齢者は栄養不良に陥る危険性があります。高齢者の低栄養は、「フレイル(加齢により心身が老い衰えた状態)」の原因の一つとなります。ドライマウスの治療と予防は、健康長寿のためにも大切です。
原因は加齢、全身疾患、服薬、ストレスなど多岐にわたります。専門外来で精査を受け、原因治療とともにさまざまな症状の治療を医科と歯科で受けることが必要です。
薬の副作用が原因でも、全身疾患治療薬の服用は欠かせません。薬の変更や口腔(こうくう)保湿剤で症状を改善することができますので、お薬をやめないでかかりつけ医院や歯科医院でご相談ください。
ストレス発散を
治療には薬物療法のほか、口の中に噴霧する人工唾液を用いることもあります。加えて、ドライマウスには、口中に広く分布する小唾液腺の分泌量低下で生じる口腔粘膜の乾燥も関係しており、口腔保湿剤は口腔粘膜を潤すのに役立ちます。近年、さまざまな成分が配合された保湿剤が開発されています。
唾液腺マッサージや口腔筋機能療法、散歩や趣味などによるストレス発散は予防にも役立ちます。秋季、冬季の空気の乾燥によってドライマウスの症状や状態が悪化します。新型コロナウイルス感染拡大で家に閉じこもりストレスがたまりがちな日常ですが、これらの方法を用いた予防をお勧めします。
河北新報掲載:2022年10月14日
佐藤 しづ子
(さとう しづこ)
宮城県出身。1986年東北大学歯学部卒業。1990年東北大学大学院歯学研究科修了。1990年より東北大学歯学部口腔診断科助手、2020年東北大学病院総合歯科診療部 助教。2021年より現在、同病院口腔内科リエゾンセンター副センター長。専門は口腔内科学。