慢性呼吸器疾患の包括リハビリ
海老原覚(東北大学病院 リハビリテーション科 科長)
2026.3.13 Fri
悪循環回避へ生活指導
慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)や陳旧性肺結核、そしてゆっくり進行するタイプの間質性肺炎といった慢性呼吸器疾患の患者さんは、ともすれば廃用(活動低下による心身の不調)に陥りやすい人たちです。慢性呼吸器疾患の患者さんには、ベースに息切れという症状があります。重症度によって差はあるものの、体を動かしたり、運動したりしている時に呼吸が苦しくなってしまうのです。
体中の筋肉萎縮
息切れを感じるとどうしてもおっくうになり、運動量が落ちてしまいます。食事量も減り、運動しないことと相まって体中の筋肉が萎縮して、特に歩くための足腰が弱ってきます。
体中の筋肉が弱ってくると呼吸をする筋肉も弱ってきて、軽い運動でもさらに息切れを感じるようになります。ますます運動を避けるようになり、さらに身体機能は低下していくことになります。そうなると着替えなどの日常の軽い動作でも息切れを感じることになり、全然動かなくなり廃用となるのです。
私たちはこれを慢性呼吸器疾患の「負のスパイラル」と呼んでいます。このスパイラルから脱出する方法が、私たちが行っている呼吸リハビリテーションです。
呼吸リハビリは、息切れによって運動をしなくなっている患者さんに対し、息切れを感じないようにする呼吸の方法や日常生活での動作の仕方を教え、適切な運動量を設定して運動指導をします。
慢性呼吸器疾患の患者さんには、栄養摂取がうまくいかず痩せている人が少なくありません。痩せていると病気の進行が速くなるという報告もあるので、栄養指導も行っていきます。必要があれば酸素療法や薬の調整・指導なども検討します。
院内連携が必要
病院内の多くの職種と連携してリハビリを行う必要があり、そのような包括的な呼吸リハビリがとても有効であると言われています。自宅に戻って病院の指導から離れた患者さんが、包括的呼吸リハビリで学んだことを継続できるような生活習慣を身に付けるのも重要です。
保険診療ではリハビリの日数に上限が定められており、ずっと指導を継続することは残念ながらできません。患者さんが自分で実践するのはなかなか大変だと思われるかもしれませんが、生活習慣のこつであるセルフマネジメント技術を教えるのも、包括的呼吸リハビリの大事な項目の一つです。
河北新報掲載:2023年1月27日
海老原 覚
(えびはら さとる)
東京都出身、宇都宮高校卒業。1990年東北大学医学部卒業。2014年東邦大学医療センター大森病院リハビリテーション科教授。2022年東北大学大学院医学系研究科内部障害学分野教授。その後の診療科・分野統合により現在東北大学大学院医学系研究科臨床障害学分野教授・東北大学病院リハビリテーション科長。