緩慢な動作、意識障害…低体温症
藤田基生(東北大学病院 高度救命救急センター 講師)
2026.4.10 Fri
感染症や偏食も原因に
人の体は暑い・寒いなどの環境に対し体温を一定に保つよう、さまざまな調節をしています。調節し切れず体温が下がってしまった状態を低体温症と言います。熱中症に比べてよく知られる病名ではありませんが、総務省の統計で死亡数は熱中症の1.5倍に上り、高齢者が目立ちます。
冷え性と異なる
運動時や暑い時に汗をかき、寒い時に鳥肌が立つのは、環境を察知して脳の視床下部から皮膚に指示を出す体温調節の例です。視床下部は心臓の動きや肝臓での代謝を介しても調節を図っています。副腎、甲状腺は内分泌ホルモンによるエネルギー産生の増減で調節に関わっています。
寒い環境下でも、衣服や暖房の調整などで体への負担をある程度和らげることができますが、これらで対応できないほどの環境の継続、体内の体温調節機能の不調時に低体温症となることがあります。体温に関係なく手足やおなかが冷える冷え性とは異なります。
低体温症は「直腸や食道で測る深部体温で35度以下」と定義されています。通常は37度前後。家庭で脇の下などに挟んで使用する体温計の測定結果は、深部体温より低めになります。
初期症状は体の震えで、応急措置として毛布をかけるなどして温めます。進行すると緩慢な動作、判断力の低下、意識障害などの症状が見られます。この場合は救急車の利用も視野に入れ病院を受診しましょう。
体表面から加温
病院での治療は深部体温を測定しつつ、温かい輸液を点滴するなどしたり、体表面から加温したりします。胃やぼうこうを生理食塩水で温めることもあります。
深部体温28度以下の重症の場合は体温を戻す際に致死性不整脈の恐れがあり、人工心肺装置(ECMO)を使うことがあります。重症だと体温が戻っても死亡する例があります。肺炎などの感染症、副腎不全などの内分泌疾患、偏った食事が原因で体温調節がうまくできずに低体温症となることもあり、病院では低体温症の治療と併せて原因を探り、それぞれ対応します。
屋外よりも屋内で低体温症になる例が多く、「失禁の放置がきっかけになった」といった報告もあります。総じて日常生活の改善や気付きで防ぐことが可能です。適切な暖房器具の使用と小まめな衣服による調整のほか、日々の体調変化に注意してバランスの良い食事を心がけてください。
万が一、いつもより脇の下が冷えていて、意識も低下しているといった場合は病院を受診しましょう。
河北新報掲載:2023年2月24日
藤田 基生
(ふじた もとお)
兵庫県出身。2002年東北大学医学部卒業。古川市立病院、済生会神奈川県病院で外科研修を経て、2006年東北大学病院移植再建内視鏡外科に入局。2010年東北大学病院高度救命救急センターへ出向。2015年外科から救急科へ所属を変更。2021年高度救命救急センター病院講師。