TOHOKU MEDICINE LIFE NEWSROOM

東北大学医療系メディア「ライフ」ニュースルーム

TOHOKU UNIVERSITY SCHOOL of MEDICINE + HOSPITAL

TOHOKU MEDICINE LIFE NEWSROOM

点滴ライン整理の時間を削減
未来型医療創造卓越大学院プログラム「カラフルラインホルダー」を開発

発表のポイント

  • 東北大学未来型医療創造卓越大学院プログラム(注1)の大学院生が、医療現場の観察を通じて点滴ラインの整理をする「カラフルホルダー」を開発しました。
  • 本製品は、点滴ラインの絡まりを防ぎ、長さ調整を容易にするデバイスで、重症患者の点滴ライン整理時間と看護師のストレスを削減し、患者ケアの時間確保への貢献が期待されます。
  • 本製品は、意匠権を取得済で現在特許を申請中です。2024年内にYKアクロス株式会社が全国販売を開始し、多くの医療機関での活用を目指しています。

概要

医療現場では多くの患者が治療のために点滴を必要とし、特に重症患者に対する集中治療では同時に何種類もの点滴が必要になります。患者の体位変換や、検査で移動する際、点滴ラインが容易に絡まり、その整理に多くの時間が費やされ、看護師の精神的・時間的な負担が増加していました。
その問題を解決するため、東北大学未来型医療創造卓越大学院プログラムのプログラム生で大学院生の横川 裕大、國富 葵と臨床研究推進センターバイオデザイン部門の小鯖 貴子助手らは、点滴整理をサポートするデバイス「カラフルラインホルダー」を、YK アクロス株式会社、広陵化学工業株式会社と連携して
開発しました。本製品は、カラフルなブロックで点滴ラインを 1 本ずつ保持して絡まりを防ぎ、ワンタッチで3段階の長さ調節が可能な構造になっており、2024年内にYKアクロス株式会社が全国販売を開始します 。本製品は病室や手術室などで点滴ラインの絡まりを解消し、患者ケアの時間と質の向上に貢献することが期待されます。

詳細な説明

開発の背景
入院患者に投与される点滴のラインは、日々のケアや処置、移動などで容易に絡まります。特に重症患者の治療では多くの点滴ラインを24時間持続的に必要とし、これらの点滴ラインは通常、床に触れて不潔にならないように余剰部分を点滴台などにまとめて掛けられています。しかし、合併症予防のための体位交換や処置、検査や部屋移動の際には、一時的に点滴ラインをほどく必要があり、その結果、点滴ラインは頻繁に且つ複雑に絡まってしまいます。点滴ラインが絡まると管理が困難になり、何の薬剤がどのラインから注入されているか判別しづらくなり危険です。そのため、平時から点滴ラインを整理し絡まりのない状態を維持することは重要で、その業務に看護師は多くの時間を費やしており、精神的・時間的な負担を増加させ、患者ケアに費やす時間を減少させる一因となっていました。

今回の取り組み
未来型医療創造卓越大学院プログラム(プログラムコーディネーター:中山啓子(なかやま けいこ)教授)では医療現場の課題をバイオデザイン(注2)の手法を用いて抽出し言語化する現場観察を行っています。同プログラム生で大学院生の横川 裕大(よこかわ ゆうた)、國富 葵(くにとみ あおい)は、臨床研究推進センターバイオデザイン部門の小鯖貴子(こさば たかこ)助手とともに高度救命救急センターを観察し、入院患者の点滴ライン整理に時間がかかっていることに気がつき、この問題を深堀りしました。そして90以上のソリューションアイデアを考えた結果、点滴整理サポートデバイス「カラフルラインホル
ダー」を開発しました。このデバイスは、点滴を保持する連結されたブロックと長さを調節できるリールの2つの構造からできています。点滴ラインを1本ずつカラフルなブロックで保持することで絡まりを防ぎ、整理と認識をしやすくするとともに、処置や移動の際にはブロックでラインを保持した状態のまま
リールの部分をワンタッチで 3 段階に長さを調節することができます。YKアクロス株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:田渕 浩記(たぶち こうき))、広陵化学工業株式会社(本社:奈良県北葛城郡、代表取締役:中西 勝(なかしに まさる))と連携してデバイスの製品化を進めており、プロトタイプを用いた実証研究では、点滴整理にかかる時間の短縮と看護師のストレス軽減が確認されました。

今後の展開
点滴の絡まりを防ぎ、かつ長さ調節を同時に行うアイデアはこれまでになく、本製品は意匠権を取得済で現在特許を申請中です。2024年内にYKアクロス株式会社が全国販売を開始し、多くの医療機関での導入が期待されています。このデバイスは、病室や手術室などでの点滴ラインの絡まりを解消し、患者ケアの時間の確保と質の向上を図ります。

カラフルラインホルダー

点滴を保持する連結されたブロックと長さを調節できるリールの2つの構造からできています。点滴ラインを1本ずつカラフルなブロックで保持することで絡まりを防ぎ、整理と認識をしやすくするとともに、処置や移動の際にはブロックでラインを保持した状態のままリールの部分をワンタッチで3段階に長さを調節することができます。

用語説明

注1.東北大学未来型医療創造卓越大学院プログラム:文理共学、産官学連携、国際連携を通じ、世界に先んじて超高齢社会となりつつある東北地方から未来型の技術や個別化医療を開発し、未来医療として世界へ展開できる人材を育成することを目標とするプログラム。2019 年より開始された。
注2.バイオデザイン:デザイン思考をもとにした医療機器イノベーションを牽引する人材育成プログラム。

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学未来型医療創造卓越大学院プログラム
TEL:022-717-8031
Email:mirai-takuetsu*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
東北大学病院広報室
TEL:022-717-8032
Email:press*pr.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

関連資料
プレスリリース資料(PDF)