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運動と労働生産性や幸福感、QOLとの関連を分析 -東北大学とワークアウトプラスが共同研究を開始-

発表のポイント
  • 東北大学とワークアウトプラスは、ジムやスポーツグループ等での運動やそれによる短期的な体重変化が、労働生産性(注1)や幸福感、QOL(生活の質)などの健康とどのように関連するのかを分析する共同研究を開始しました。
  • 企業の「健康経営」でも注目される運動と労働生産性や幸福感、QOLの関連について、全国約3万人を対象としたインターネット調査データを疫学および統計学を駆使して解析し、論文出版を目指します。
  • 本研究で得られる知見は、将来的に企業の健康経営を推進する運動プログラムの開発や、個人の健康づくり、労働生産性の向上への応用につながる可能性があります。
概要

社員の健康は、企業の持続的な成長を支える重要な資本です。近年、「健康経営」への関心が高まっており、運動習慣と健康の関連も注目されています。しかし、ジムやスポーツグループ等での運動やそれによる短期的な体重変化が、労働生産性や幸福感、QOLなども含めた健康にどれほど関連するのか、その検討は十分とは言えない状況です。
東北大学大学院医学系研究科(所在地:宮城県仙台市、研究科長:石井直人、以下「東北大学」)と合同会社ワークアウトプラス(本社:東京都中央区、代表: 近藤晃生、以下「ワークアウトプラス」)は、2025年7月から、ジムやスポーツグループ等での運動やそれによる短期的な体重変化と、労働生産性、幸福感や健康との関連を分析する共同研究を開始しました。本研究では、東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野の田淵貴大准教授が研究代表者を務め、2020年から毎年調査を実施している、日本全国の18-79歳の男女、一般住民約3万人を対象としたインターネット調査プロジェクトJACSIS/JASTIS研究(注2)の既存のデータを用い、疫学および統計学の手法により、横断研究および縦断研究を実施し、運動と健康・生産性との関連を科学的に分析します。
得られた研究成果は、企業の健康経営を推進する運動プログラム開発や、個人の健康づくりや労働生産性向上への応用が期待されます。将来的には、研究成果を積み重ねることにより、得られた知見の社会実装にも取り組んでいきます。

詳細な説明

研究の背景
少子高齢化が加速する日本では、一人ひとりが健康で長く活躍できる社会を築き、社会全体の活力を維持・向上させることが喫緊の課題となっています。WHO(世界保健機関)も、運動不足が様々な疾患のリスクを高めると警鐘を鳴らしており、人々の活動的なライフスタイルを促進することは、わが国全体の重要なテーマの一つです。
こうした中、多くの企業が従業員の健康を重要な経営資本と捉え、その維持・増進を支援する「健康経営」に注目しています。しかし、「運動が体に良い」ことは広く知られていますが、ジムやスポーツグループ等での運動やそれによる短期的な体重変化がどの程度、労働生産性、幸福感やQOLなども含めた健康と関連するのか、その検討は十分とは言えない状況です。

今回の取り組み
東北大学とワークアウトプラスは、2025年7月からジムやスポーツグループ等での運動やそれによる短期的な体重変化と、労働生産性、幸福感や健康との関連を分析する共同研究を開始しました。東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野の田淵貴大准教授が研究代表者を務め、2020年から毎年調査を実施している、日本全国の18-79歳の男女、一般住民約3万人を対象としたインターネット調査プロジェクトJACSIS/JASTIS研究の既存のデータを用いて、疫学および統計学により、集団間の違いを検定したり、回帰モデルを用いたりして解析し、調査項目に応じて適切なデザイン(横断研究および縦断研究)を選択します。ワークアウトプラスは、研究結果の解釈や成果のまとめにおいて現場の知見から貢献し、研究成果を広報する、また、社会実装につなげる取組みを考案する役割を担います。必要に応じて研究期間の延長も実施し、運動と労働生産性、幸福感やQOLとの関連を分析し知見を蓄積していきます。

国立大学法人東北大学大学院 医学系研究科 公衆衛生学分野
長年にわたる大規模調査の実績と、日本の公衆衛生学をリードしてきた豊富な知見を活かし、研究全体のデザインや高度なデータ解析を担当します。研究の信頼性を担保する「科学的知の拠点」としての役割を担います。
Webサイト:https://www.med.tohoku.ac.jp/

合同会社ワークアウトプラス
パーソナルジムのメディア運営で培ったノウハウを活かし、研究で得られた専門的な知見を、一般の方や企業に分かりやすく伝える「社会への翻訳者」としての役割を担います。研究成果を具体的な健康増進サービスなどへ応用(社会実装)する出口戦略を検討していきます。
Webサイト:https://workout-plus.jp/company/

今後の展開
本共同研究の成果は、ジムやスポーツグループ等での運動やそれによる短期的な体重変化と労働生産性や幸福感、QOLなどの健康との関連に関する学術論文として発表することを目指します。同テーマにて複数の学術論文を積み重ね、関連性を明確にしていきます。そして、将来的には、本研究により明らかとなる関連をもとに、因果関係を検証するための運動介入研究へと発展させることを目指します。

用語説明

注1.労働生産性:本研究では、病気による欠勤(アブセンティーイズム)や、出社はしているものの心身の不調で本来の能力を発揮できない状態(プレゼンティーイズム)などを指標とします。
注2.JACSIS/JASTIS研究については下記WEBサイトの説明も参照ください。https://jacsis-study.jp/ および https://jastis-study.jp/

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野
准教授 田淵 貴大(たぶち たかひろ)
TEL:022-717-8123
Email:takahiro.tabuchi.a5*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
TEL:022-717-8032
Email:press.med*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

関連資料
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