個人の消費・資産形成行動の実態及び関連要因を分析 -東北大学とEMMAが共同研究を開始-
2025.8.18 Mon
研究発表のポイント
- 東北大学とEMMAは、NISA・iDeCo等の制度利用などの資産形成行動や様々な個人の消費行動の実態及び関連要因を分析する共同研究を開始しました。
- 年齢・所得・ライフステージ等の社会経済要因も含めた多様な背景因子に注目し、全国約3万人を対象としたインターネット調査データを疫学および統計学を駆使して解析し、論文出版を目指します。
- 本研究で得られる知見は、将来的に個人の消費・資産形成行動に関する教育プログラムの開発や公的制度の改善の提案につながる可能性があります。
概要
近年、国を挙げた「貯蓄から投資へ」の流れが加速する中、個人の資産形成を支援する制度として、NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)などの活用が推進されています。しかし、これらの制度の認知や利用には個人間で大きな差があると考えられます。
東北大学大学院医学系研究科(所在地:宮城県仙台市、研究科長:石井直人、以下「東北大学」)と株式会社EMMA(本社:東京都中央区、代表: 八千古嶋 ひろ子、以下「EMMA」)は、2025年8月から、個人の消費行動とNISA・iDeCo等の制度利用などの資産形成行動の実態及び関連要因を分析する共同研究を開始しました。本研究では、東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野の田淵貴大准教授が研究代表者を務め、2020年から毎年調査を実施している、日本全国の18-79歳の男女、一般住民約3万人を対象としたインターネット調査プロジェクトJACSIS/JASTIS研究(注1)の既存のデータを用い、疫学および統計学の手法により、横断研究および縦断研究を実施し、年齢、所得、ライフステージ等の背景因子と消費・資産形成行動との関連性を科学的に分析します。
得られた研究成果は、教育プログラムの開発や公的制度の改善の提案につながるものと期待されます。将来的には、研究成果を積み重ねることにより、得られた知見の社会実装にも取り組んでいきます。
詳細な説明
研究の背景
近年、個人の資産形成を支援する制度として、NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)などの活用が推進されています。しかし、これらの制度の認知や利用には個人間で大きな差があると考えられます。
このような制度活用の格差に加え、近年では個人の消費・資産形成行動などの金融問題への理解の欠如が深刻な社会問題を引き起こしています。例えば、「楽に稼げる」などの誘惑から闇バイトや犯罪行為に加担するケースや、特殊詐欺の被害などの事例があげられます。これらの背景には、社会経済的要因も含めた多様な背景因子が関連していると考えられます。
個人の消費・資産形成行動は、年齢、所得、家族構成、職業などのライフステージ等の個人の背景要因によって大きく異なると考えられますが、これらを包括的に捉えた検討は十分とは言えない状況です。
今回の取り組み
東北大学とEMMAは、2025年8月から個人の消費・資産形成行動(特にNISAやiDeCoなどの制度利用)の実態とその関連要因を分析し、これらを明らかにすることを目的とした共同研究を開始しました。東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野の田淵貴大准教授が研究代表者を務め、2020年から毎年調査を実施している、日本全国の18-79歳の男女、一般住民約3万人を対象としたインターネット調査プロジェクトJACSIS/JASTIS研究の既存のデータを用いて、疫学および統計学により、集団間の違いを検定したり、回帰モデルを用いたりして解析し、調査項目に応じて適切なデザイン(横断研究および縦断研究)を選択します。EMMAは、研究結果の解釈や成果のまとめにおいて現場の知見から貢献し、研究成果を広報する、また、社会実装につなげる取組みを考案する役割を担います。必要に応じて研究期間の延長も実施し、消費・資産形成行動の実態及び関連要因を分析し知見を蓄積していきます。
・国立大学法人東北大学大学院 医学系研究科 公衆衛生学分野
長年にわたる大規模調査の実績と、日本の公衆衛生学をリードしてきた豊富な知見を活かし、研究全体のデザインや高度なデータ解析を担当します。研究の信頼性を担保する「科学的知の拠点」としての役割を担います。
Webサイト:https://www.med.tohoku.ac.jp/
・株式会社EMMA
親子で金融を学ぶことができる教育サービス提供のノウハウを活かし、研究で得られた専門的な知見を、一般の方や企業に分かりやすく伝える役割を担います。研究成果を具体的な教育サービスなどへ応用(社会実装)する出口戦略を検討していきます。
Webサイト:https://emma8.jp/
今後の展開
本共同研究の成果は、個人の消費・資産形成行動の実態及び関連要因に関する学術論文として発表することを目指します。同テーマにて複数の学術論文を積み重ね、関連性を明確にしていきます。そして、将来的には、本研究により明らかとなる関連をもとに、因果関係を検証するための社会実装研究・介入研究へと発展させることを目指します。
用語説明
注1.JACSIS/JASTIS研究についてはWEBサイトの説明も参照ください。https://jacsis-study.jp/ および https://jastis-study.jp/
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野
准教授 田淵 貴大(たぶち たかひろ)
TEL:022-717-8123
Email:takahiro.tabuchi.a5*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
TEL:022-717-8032
Email:press.med*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
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