留学生の健康状態はヘルスリテラシーに左右される可能性 -日本の大学生を対象とした調査で明らかに-
2026.4.7 Tue
研究発表のポイント
- 日本の大学に在籍する留学生は、日本人学生より良好な健康状態の割合が低いことが示されましたが、健康に関する情報を理解し活用する能力「ヘルスリテラシー1」を考慮するとその差は消失しました。
- ヘルスリテラシーが高い学生に限ると、留学生の方が日本人学生よりも健康状態が良好であることが明らかとなりました。
- 留学生の健康格差は「国籍」ではなく「ヘルスリテラシー」が関連している可能性が示されました。留学生の健康支援において、国籍に基づく支援ではなく、ヘルスリテラシー向上を中心とした支援の必要性が示唆されました。
概要
日本在住の外国人や留学生は言語や文化、医療制度の違いなどにより健康上の課題を抱えやすいことが知られていますが、その背景要因の詳細は十分に明らかになっていませんでした。
東北大学大学院医学系研究科運動学分野の山田陽介教授、同大学大学院農学研究科食科学国際共同大学院のAdeoya Akindele助教(研究当時 同分野大学院生)、 国立医薬品基盤・健康・栄養研究所の門間陽樹ウェルビーイング室長(研究当時 同分野准教授)、同大学産学連携機構イノベーション戦略推進センターの永富良一特任教授(研究当時 同分野教授)らは、日本の大学生を対象に、国籍と健康状態の関連を検討し、その関連におけるヘルスリテラシー(健康情報を理解・活用する能力)の役割を明らかにしました。全国6地域の大学生1,366名を対象としたオンライン調査の結果、日本人学生と比較して留学生は良好な健康状態の割合が低いことが示されました。しかし、ヘルスリテラシーを考慮するとこの差は消失し、さらにヘルスリテラシーが高い学生に限ると、留学生の方が日本人学生よりも健康状態が良好であることが明らかとなりました。これらの結果は、留学生の健康格差は国籍そのものではなく、ヘルスリテラシーの違いによって生じている可能性を示しています。
本研究成果は、2026年3月26日にAnnals of Medicineに掲載されました。
詳細な説明
研究の背景
近年、日本の大学における留学生数は増加しており、異なる文化的・社会的背景を持つ学生の健康支援が重要な課題となっています。一般に移民や留学生は、言語の壁、医療制度の違い、社会的支援の不足などにより、健康状態が不利になることが指摘されています。
一方で、健康に関する情報を理解し活用する能力であるヘルスリテラシーは、健康格差を説明する重要な要因として注目されています。しかし、日本において大学生を対象に、国籍と健康状態の関係におけるヘルスリテラシーの役割を検討した研究は限られていました。
今回の取り組み
東北大学大学院医学系研究科運動学分野の山田陽介(やまだ ようすけ)教授、同大学大学院農学研究科食科学国際共同大学院のAdeoya Akindele(アデオヤ アキンデレ)助教(研究当時 同分野大学院生)、 国立医薬品基盤・健康・栄養研究所の門間陽樹(もんま はるき)ウェルビーイング室長(研究当時 同分野准教授)、同大学産学連携機構イノベーション戦略推進センターの永富良一(ながとみ りょういち)特任教授(研究当時 同分野教授)らは、日本の大学生を対象に、国籍と健康状態の関連を検討するとともに、その関連におけるヘルスリテラシーの役割を検討しました。
本研究では、日本の6地域に所在する大学の学生1,366名を対象に、オンライン質問票調査を実施しました。健康状態は自己評価により「良好」と「良好でない」に分類し、ヘルスリテラシーは47項目からなるEuropean Health Literacy Survey2を用いて評価しました。
解析の結果、留学生の61%が健康状態を良好と回答したのに対し、日本人学生では73%でした。しかし、社会経済的要因や教育要因を調整すると差は縮小し(調整前:オッズ比0.56、95%信頼区間0.44–0.71 p<0.0001 → 調整後:0.72、0.53–0.99 p=0.04)、さらにヘルスリテラシーを考慮すると、国籍と健康状態の関連は有意ではなくなりました(0.81、0.58–1.14 p<0.2)。
さらにヘルスリテラシーの高低で層別化した解析では、ヘルスリテラシーが高い学生では、留学生の方が日本人学生よりも健康状態が良好である一方、ヘルスリテラシーが低い学生では留学生の健康状態が著しく低いことが明らかとなりました(図2)。
今後の展開
本研究は、留学生や外国人の健康支援において、国籍に基づく支援ではなく、ヘルスリテラシー向上を中心とした支援が重要であることを示しています。特に、日本の医療制度や健康情報へのアクセス方法に関する教育的支援は、留学生や外国人の健康格差の解消に寄与する可能性があります。
今後は、健康教育プログラムの開発や、多言語対応の健康情報提供、医療アクセス支援など、ヘルスリテラシー向上を目的とした介入研究が求められます。また、日本人学生に対してもヘルスリテラシー向上が健康増進に寄与する可能性があり、大学全体の健康支援施策への応用が期待されます。


数値はオッズ比および括弧内に95%信頼区間を示す。
a 年齢と性別を調整
b 経済状態、婚姻状況、学習段階、専攻分野を調整
用語説明
- ヘルスリテラシー: 健康に関する情報を理解し活用する能力。日本の医療制度や健康情報へのアクセス方法などの知識とその理解など。 ↩︎
- European Health Literacy Survey:ヘルスリテラシーの4つの情報に関する能力(入手、理解、評価、活用)を3つの領域(ヘルスケア、疾病予防、ヘルスプロモーション)で測定する尺度(質問紙)。 ↩︎
論文情報
タイトル:The role of health literacy in the association between nationality and health status among university students: a cross-sectional study
著者:Akindele Abimibayo Adeoya*, Haruki Momma, Ryoichi Nagatomi, Yosuke Yamada
掲載誌:Annals of Medicine
DOI: 10.1080/07853890.2026.2643976
URL: https://doi.org/10.1080/07853890.2026.2643976
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学産学連携機構
イノベーション戦略推進センター特任教授
(研究当時 同大学大学院医学系研究科運動学分野教授)
永富 良一
TEL: 022-752-2191
Email: ryoichi.nagatomi.c4*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
TEL: 022-717-8032
Email: press.med*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
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