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歯科エックス線の被ばく線量低減の可能性 ―非AI画像鮮明化ソフトの活用で低線量矯正検査の実現へ―

発表のポイント
  • 歯科矯正検査に用いられる側面頭部エックス線規格撮影1は、小児・若年者を対象とすることも多く、被ばく線量の軽減(低被ばく化)が肝要です。
  • 非AI画像鮮明化ソフトMIEr®2による画像処理により、低線量の歯科エックス線(レントゲン)画像の見やすさを補えるかを検証しました。
  • 通常撮影の60%線量画像に軽度の画像鮮明化処理を行うと5基準点3中4点が通常線量と同等以上の見やすさを示す傾向が確認できました。
  • 本研究で用いた非AI画像鮮明化技術により、低線量画像の視認性を向上できる可能性が示されました。
概要

歯科矯正の検査で用いられる側面頭部エックス線規格撮影は、放射線感受性が高い小児・若年者に対しても実施するため、被ばく線量を抑える工夫が肝要です。東北大学大学院歯学研究科の小嶋郁穂准教授らの研究グループは、低線量の歯科エックス線(レントゲン)画像を画像処理ソフトで処理した場合の性能の検証を試みました。段階的に線量を下げて撮影した頭蓋骨ファントム4画像に非AI画像鮮明化ソフトを適用し、6名の評価者による画像評価を行いました。基準点の見やすさを比較した結果、60%線量画像に対する軽度の画像鮮明化で、通常線量画像と同等以上の見やすさを示す傾向がありました。
本研究成果は、従来の撮影条件の最適化に加え、撮影装置の更新だけに依存しない、画像鮮明化技術を用いた低被ばく化補助技術として活用できる可能性を示唆するものであり、エックス線検査の低被ばく化が期待されます。
本研究成果は、2026年7月6日に国際歯科顎顔面放射線学会の学術誌Dentomaxillofacial Radiologyに掲載されました。

詳細な説明

研究の背景
歯科・顎顔面領域のエックス線検査は、病態の診断だけでなく治療計画を立案するために欠かせない検査です。一方で、エックス線は電離放射線であるため、検査の利益がリスクを上回ることを前提に、必要な情報を得られる範囲で線量をできるだけ低くすることが求められます。特に小児・若年者では、放射線感受性が高いことから、低被ばく化の意義が大きいと考えられます。
側面頭部エックス線規格撮影は、頭部を一定の条件で撮影する歯科矯正用のエックス線規格写真です。基準点を確認し、顎顔面の形態や歯の位置関係を評価します。側面頭部エックス線規格撮影は、歯科矯正治療の診断に用いるため小児・若年者の撮影が多く、線量を下げることで画像の鮮明度が低下し、基準点が見えにくくなることがあります。そこで本研究では、撮影後の画像処理によって低線量画像の見やすさを補えるかを検討しました。

今回の取り組み
東北大学大学院歯学研究科 歯科医用情報学分野の小嶋郁穂准教授らの研究グループは、頭蓋骨ファントムを用いて、通常線量を100%とした側面エックス線規格撮影を実施しました。さらに、撮影時間を短縮することで60%、40%、20%、10%線量の低線量画像を取得し、60%、40%、20%線量画像にはMIEr®による画像鮮明化処理を行いました。
画像鮮明化処理は2段階で行いました。軽度の処理では、処理前後の違いが一見して分かりにくい程度に設定し、高度の処理では、基準点の見やすさを最大化するように設定しました。東北大学病院の歯科画像診断と歯科矯正を専門とする6名の評価者が、5つの基準点を通常線量画像と比較しました(図1)。評価者が視覚的に2枚の画像を直接比較する一対比較法を用いることで、単独画像の点数評価では判断しにくい微妙な視認性の差を評価しました。6名の評価者による平均評価では良好な評価者間信頼性が得られました。
その結果、画像鮮明化を行わない10%線量画像では、5つの基準点すべてで通常線量画像より見やすさが有意に低下しました。一方、60%線量画像に軽度の画像鮮明化処理を行うと、5つの基準点のうち4つで通常線量画像と同等以上の見やすさを示す傾向がありました。さらに、高度の画像鮮明化処理では、60%および40%線量画像で5つの基準点すべてが通常線量画像より有意に見やすく評価されました。これらの結果から、撮影後の画像鮮明化処理が、低線量画像で低下する基準点の視認性を補う可能性が示されました(図2)。

今後の展開
今後は、小児・若年者を含む患者画像を用いて、基準点の同定誤差、歯科矯正診断や治療計画への影響、診断精度を検証する必要があります。臨床画像での有効性が確認されれば、従来の撮影条件の最適化に加え、撮影装置の更新だけに依存しない、画像鮮明化技術を用いた低被ばく化支援手法として応用できる可能性があります。今後、臨床応用に向けたさらなる検証を進めていきます。

図1. 低線量側面頭部エックス線規格写真に対する画像鮮明化処理を適用
図2. 通常線量画像との比較による主な結果
謝辞

本研究は日本学術振興会 (JSPS) 科学研究費(JP24K13234、JP24K02639)の支援を受けて実施されました。また、本論文は「東北大学2026年度オープンアクセス推進のためのAPC支援事業」により、オープンアクセスとして公開されています。

用語説明
  1. 側面頭部エックス線規格撮影:頭部を一定の条件で横から撮影する歯科矯正用のエックス線規格写真。顎顔面の形態や歯の位置関係の評価に用いられる。 ↩︎
  2. MIEr®(ミエル):Medical Image Enhancer(開発元:株式会社ロジック・アンド・デザイン)。撮影済み画像を処理し、輪郭や細かな構造を見やすくするソフトウエア。本研究で用いた方法は、人工知能により新たな構造を描き加えるものではない。 ↩︎
  3. 基準点:側面頭部エックス線規格撮影で顎顔面形態を計測するための目印となる点。Nasion(鼻根点)、ANS(前鼻棘)、PNS(後鼻棘)、Point A(上顎歯槽基底部最深点)、U1(上顎中切歯切端)などが含まれる。 ↩︎
  4. ファントム:人体や組織を模擬して、撮影条件や画像処理の評価に用いる模型。本研究では、成人の乾燥頭蓋骨を用いた医療用模型で撮影を行った。 ↩︎
論文情報

タイトル:Image sharpening improves the visibility of reference points on low-dose lateral cephalometric radiographs: a phantom study
著者:Ikuho Kojima*, Arata Ito, Yusuke Shimada, Naoko Tagaino Watanabe, Manami Ikawa, Shu Onodera, Hiroyasu Kanetaka, Masahiro Iikubo
*責任著者:東北大学大学院歯学研究科
歯科医用情報学分野 准教授 小嶋 郁穂
掲載誌:Dentomaxillofacial Radiology
DOI:10.1093/dmfr/twag047
URL:https://academic.oup.com/dmfr/advance-article/doi/10.1093/dmfr/twag047/8725343

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院歯学研究科 歯科医用情報学分野
准教授 小嶋 郁穂
TEL: 022-717-8390
Email: ikuhokojima*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院歯学研究科 広報室
TEL: 022-717-8260
Email: den-koho*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

関連資料
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