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近所づきあいの良さは災害への備えの実施と関連―全国2.8万人調査で社会・居住条件別の差も明らかに―

発表のポイント
  • 全国インターネット調査(JACSIS2023)1の28,481人を分析したところ、近所づきあいなどが良いと答えた人は、そうでない人より、災害への備えを行っている割合が高いことが分かりました。
  • 近所づきあいが良いと答えた人は、家族の安否確認方法を決めている割合や、自宅・外出先の避難場所や避難経路を把握している割合が、そうでない人の1.53〜1.54倍でした。
  • 全国での災害への備えの実施割合は28.9〜42.4%でした。20歳代、一人暮らし、未婚、民間賃貸に住む人、世帯所得が低い人では、災害への備えを行っている割合が一貫して比較的低い傾向が見られました。
概要

これまで日本では、災害への備えが、年齢、所得、世帯構成、住まい、近所や地域との関わりによってどう異なるかを全国規模で調べたデータは限られていました。
東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野の香田将英講師らの研究グループは、全国インターネット調査(JACSIS2023)の28,481人を分析しました。その結果、地域の人への信頼、地域での助け合い、地域への愛着、近所づきあいについて良いと答えた人は、そうでない人より、家具の固定や備蓄など災害への備えを行っている割合が高いことが分かりました。特に、近所づきあいは家族の安否確認方法と避難場所・避難経路の把握に比較的大きく関連していました。また、20歳代、一人暮らし、未婚、民間賃貸に住む人、世帯所得が低い人で災害への備えの実施割合が低い傾向がみられました。本研究は、生活条件に応じた支援に加え、地域とのつながりも視野に入れた防災施策を検討するための基礎的知見を提供するものです。
本研究成果は、国際学術誌『International Journal of Disaster Risk Reduction』で2026年7月19日にオンライン公開されました。

詳細な説明

研究の背景
2015年に仙台市で開かれた国連防災世界会議では「仙台防災枠組2」が採択され、災害が起こる前の備えを強めることが世界共通の目標となりました。日本では内閣府の世論調査などで備蓄の実施割合などが調べられてきました。一方で、家具の固定から避難場所の把握まで複数の具体的な行動を、年齢、所得、世帯構成、住まい、近所や地域との関わりとあわせて全国規模で検討した研究は限られていました。

今回の取り組み
東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野の香田将英(こうだ まさひで)講師らの研究グループは、全国インターネット調査JACSIS2023の28,481人の回答を、国の統計に近づける補正を行ったうえで分析しました3。災害への備えについては、①室内の家具が倒れないよう固定しているか、②食料・飲料・生活用品を備蓄しているか、③非常時に持ち出すバッグを用意しているか、④家族と安否を確認する方法を決めているか、⑤自宅にいるときの避難場所や避難経路を把握しているか、⑥外出先での避難場所や避難経路を把握しているか、の6項目を「はい/いいえ」の回答で調査しました。あわせて、地域の人を信頼できると感じているか、地域の人が互いに助け合おうとしていると感じているか、現在住む地域に愛着があるか、近所の人と良い関係にあると感じているか、の4項目をたずねました。各項目について良いと答えた人とそうでない人を比べ、性別、年齢、世帯人数、婚姻状況、学歴、就労状況、住まいの所有形態、世帯収入、健康状態の違いを考慮して、6つの備えとの関連について、95%信頼区間4を伴う調整後の実施割合の比5を推定しました。
その結果、地域の人への信頼、地域での助け合い、地域への愛着、近所づきあいのいずれについても、良いと答えた人は、そうでない人より、6つの災害への備えを行っている割合が高く、24通りすべてで同じ方向の関連がみられました(図1)。なかでも、近所づきあいが良いと答えた人では、家族の安否確認方法を決めている割合が1.53倍、自宅での避難場所・避難経路を把握している割合が1.53倍、外出先での避難場所・避難経路を把握している割合が1.54倍でした(図2)。20歳代は6つの備えすべてで全年齢群中最も低い実施割合でした(図3)。一人暮らしでは家族の安否確認方法が17.9%、民間賃貸では家具の固定が21.6%でした。一方、70歳以上では食料・飲料などの備蓄が54.1%、自宅での避難場所・避難経路の把握が60.3%でした。全国での実施割合は、家族の安否確認方法の28.9%から、食料・飲料などの備蓄の42.4%までの範囲でした。

今後の展開
今回の研究から、地域とのつながりを良好と認識している人ほど、災害への備えを実施している割合が高いことや、20歳代、一人暮らし、民間賃貸住宅居住者、世帯所得が低い人などで災害への備えの実施割合が低いことが明らかになりました。これらの結果は、災害への備えを促進する方策を検討する際に、生活条件だけでなく、地域とのつながりにも着目することの重要性を示す基礎的な知見となります。
なお、本研究は一時点の状況を調べた横断研究であり、インターネット調査への参加者を対象としています。備えの実施と近所や地域への認識はいずれも本人の回答で、因果関係を示す結果ではありません。

図1. 地域に関する4つの認識と6つの備えの関連
年齢や所得などの違いを考慮した比較で、地域の人への信頼、地域での助け合い、現在住む地域への愛着、近所づきあいのいずれについても、良いと答えた人では、そうでない人より6つの備えすべての実施割合が高く、24通りすべてで実施割合の比が1.00を上回りました。
図2. 近所づきあいと6つの備え
年齢や所得などの違いを考慮した比較で、近所づきあいが良いと答えた人では、6つの備えすべての実施割合が、そうでない人の1.30〜1.54倍でした。特に、家族の安否確認方法と自宅・外出先での避難場所・避難経路の把握は1.53〜1.54倍でした。横線は95%信頼区間です。
図3. 年齢・世帯構成・住まい別にみた6つの備えの違い
全国値、年齢群別、一人暮らし、民間賃貸の実施割合を示します。20歳代は6項目すべてで全年齢群中最も低く、70歳以上では食料・飲料・生活用品の備蓄が54.1%、自宅での避難場所・避難経路の把握が60.3%でした。一人暮らしでは家族の安否確認方法が17.9%、民間賃貸では家具の固定が21.6%でした。
 
謝辞

本研究は、JSPS科研費JP23K16359の支援を受けて実施されました。JACSIS2023調査のデータ収集は、JSPS科研費JP25H01079の支援を受けています。

用語説明
  1. JACSIS2023:「日本における新型コロナウイルス問題と社会全般に関する全国調査(Japan COVID-19 and Society Internet Survey)」の2023年調査。全国の16歳以上を対象とするインターネット調査で、回答の質に問題のある人を除いた28,481人を分析しました。 ↩︎
  2. 仙台防災枠組:2015年3月に仙台市で開催された第3回国連防災世界会議で採択された、2030年までの国際的な防災指針。災害リスクの理解や、災害リスクを減らすための防災への投資などを優先行動に掲げています。 ↩︎
  3. 統計的な補正(標準化逆確率重み付け):インターネット調査の回答者の性別・年齢構成などが国の統計に近づくように、回答に重みを付けて集計する方法です。 ↩︎
  4. 95%信頼区間:データのばらつきを踏まえて、真の値が入ると考えられる範囲を示します。 ↩︎
  5. 実施割合の比(調整後):性別、年齢、世帯人数、婚姻状況、学歴、就労状況、住まいの所有形態、世帯収入、健康状態の違いを統計モデルでそろえたうえで、地域に対する認識が良い群の実施割合が、そうでない群の何倍にあたるかを表します。 ↩︎
論文情報

タイトル:Monitoring disaster preparedness behaviors in Japan: social, residential, and neighborhood-related gradients
著者:Masahide Koda*, Nahoko Harada, Kenta Minamitani, Kazuya Fujii, Masatsugu Orui, Shinichi Kuriyama, Atsushi Hozawa, Takahiro Tabuchi
*責任著者:東北大学大学院医学系研究科 公衆衛生学分野
講師 香田 将英(こうだ まさひで)
掲載誌:International Journal of Disaster Risk Reduction
DOI:10.1016/j.ijdrr.2026.106317
URL:https://doi.org/10.1016/j.ijdrr.2026.106317

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科
公衆衛生学分野
講師 香田 将英(こうだ まさひで)
TEL:  022-717-8123
Email: masahide.koda.b1*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
TEL:022-717-8032
Email:press.med*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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