TOHOKU MEDICINE LIFE MAGAZINE

東北大学医療系メディア「ライフ」マガジン

TOHOKU UNIVERSITY SCHOOL of MEDICINE + HOSPITAL

〔いのち)の可能性をみつめる

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〔いのち)の可能性をみつめる

子どもたちに安心して医療を受けてもらうために 何ができるか考え続ける

渡辺悠(東北大学病院 小児科 CLS)

これまでの経歴を教えてください。

子どもと関わる仕事がしたかったので、心理学や保育学が学べて、幼稚園・小学校の免許も取得できるコースがある大学に進学しました。ボランティアやインターンシップ、教育実習を通して子どもが普段生活する場所を間近で見られたことは、今振り返ると貴重な経験だったと感じています。その後、公立小学校の通級指導学級で時間講師として働きながら留学準備をして、アメリカの大学の修士課程に進学しました。インターンシップを修了後、CLS(チャイルド・ライフ・スペシャリスト)1の資格を取得し、東京の東邦大学医療センター大森病院でCLSの経験を積みました。

CLSを目指したきっかけはありますか。

大学3年生の時に発達障がいのゼミを選択し、病弱教育について学んだ時が、病院にも子どもがいることを初めて意識したタイミングだったと思います。卒論で病気や障がいのある子どものきょうだいへの支援をテーマに研究をして、この分野での支援について考える中で、CLSという職種に魅力を感じ、目指し始めました。当時は海外での資格取得しか道はなかったので、英語への苦手意識は強かったのですが、頑張りました。

東京の病院で経験を積んだ後、東北大学病院に入職した理由は。

東邦大学医療センター大森病院では既にCLSとして勤務されていた先輩がいて、CLSについての理解がある環境で経験を積むことができ、恵まれた環境でスタートが切れました。それから3年ほどたった時に東北大学病院で募集がかかり、私は秋田で育ったので、東北地方で過ごせたらという思いもあって、応募しました。

日々の仕事で大切にしていること、やりがいを感じるのはどんなことですか。

遊びや日常の関わりを大切にしながら、医療を受ける子どもたちの医療トラウマを極力防ぐこと、最小限にすることを大事に考えています。具体的には、処置・検査・手術の前のプリパレーション2や処置・検査中のサポート、病気や治療の説明や、きょうだい支援やイベントの企画・運営などをしています。子どもたちやご家族の不安や心配を和らげるために何ができるか、子どもたちやご家族が力を最大限に発揮できるようにするために、どんな介入や環境にしたら良いかを、多職種スタッフと連携しながら、日々試行錯誤しています。
CLSの業務は「しなければならないことがある」のではなく、「何ができるか」を考えることが大切と教わりました。正解がない苦しさやしんどさはありますが、子どもたちやご家族が乗り越えていく姿を間近で見られるのは何事にも代えがたい経験だと思っています。
何より子どもたちがかわいくて癒やされますし、子どもたちと遊ぶのも楽しいですし、ご家族と何気ないコミュニケーションを取らせていただけるのも醍醐味(だいごみ)だと感じています。

処置・検査・手術について、動画や人形、おもちゃを使いながら説明

CLSとして今取り組んでいること、今後取り組みたいことはありますか。

医療環境における子どもたちがそれぞれの方法で検査や処置に向き合えるように、小児科・小児外科のスタッフをはじめ、各検査室や多職種と連携しながら取り組んできました。検査の流れが分かりやすく伝えられるように、プリパレーションツールを作成したり、事前に検査室や治療室の見学やリハーサルを行ったりするなど、恵まれた環境の中で業務を行っています。昨年度からHPS(ホスピタル・プレイ・スペシャリスト)3の資格を取得したスタッフが増えて2名体制になり、1人で業務をしている時にはできなかった支援が届けられるようになって、ありがたいです。
今後は、さらに多くの医療を受ける子どもたちが安心して検査や処置を受けられるようにするために、スタッフ間で意見を共有しながら、何ができるかを考えていきたいです。

趣味や仕事を離れた時間の過ごし方について聞かせてください。

教育実習で上野動物園に遠足に行った時に、受け持ちの子どもと一緒に見たハシビロコウが気になり始めて以来、ハシビロコウグッズを集めていて、CLS仲間からもらったハシビロコウステッカーを手帳に入れています。今ではハシビロコウのように、普段はゆったり、でも必要な時にはさっと動けるような人になりたいと思うようになりました。
読書や映画鑑賞、音楽鑑賞など、家の中で過ごすのが好きです。美術をテーマにした小説を読んだことがきっかけで美術館巡りもしています。仙台フィルの定期公演にも通いつつ、クラシック音楽も勉強中です。いつか眠くならないで聴けるようになったらいいなぁと思っています。

ハシビロコウステッカー
  1. CLS(チャイルド・ライフ・スペシャリスト):医療環境にある子どもや家族に、心理社会的支援を提供する専門職。北米での資格取得が必要。 ↩︎
  2. プリパレーション:子どもと話し、想いを聴きながら、検査や処置についてわかりやすく伝え、一緒に心の準備をしていくこと。 ↩︎
  3. HPS(ホスピタル・プレイ・スペシャリスト):CLS同様、医療環境にある子どもや家族に、心理社会的支援を提供する専門職。 ↩︎

渡辺 悠(わたなべ はるか)

秋田県出身。CLS(チャイルド・ライフ・スペシャリスト)。大学卒業後、米国の大学に留学し、2012年にCLSの資格取得。その後東京の医療機関での勤務経て2016年から東北大学病院小児科に勤務。