「いない人」が見える-レビー小体型認知症
柿沼 一雄(東北大学病院 高次脳機能障害科 助教)
2026.5.1 Fri
症状を緩和する薬増加
幻覚症状が典型
「家に知らない人がいる」「死んだはずの猫が夜にやってくる」…。霊感や幽霊の話かと思うかもしれません。実は、これは「レビー小体型認知症」という脳の病気の症状でした。
認知症の症状といえば「もの忘れ」を真っ先に思い浮かべる方が多いでしょう。実際、認知症の中で最も多い「アルツハイマー型認知症」は大抵、もの忘れをきっかけに発見されます。
レビー小体型では、記憶力が保たれている方も多く、始めは認知症と気付かれないこともあります。
幻覚から「夫が知らない女を家に連れ込んでいる」といった妄想につながることもあれば、幻の来客に愛想良く話しかけたり、ご飯を用意したりする方もいます。「座敷わらしを見た」といったかつての逸話の一部にも、もしかしたらこうした脳の病気が隠れていたのかもしれません。
幻覚以外にも典型的な症状があります。一つは動作が緩慢になる、歩幅が小さくなる、といった運動面の症状です。また、日や時間帯によって「頭がはっきりしているとき」と「ぼんやりしているとき」の落差が見られることもあります。
早期の診断大切
見過ごされやすい症状もあります。その一つが、眠っている間に大声を上げる、身体を激しく動かすなどの「レム睡眠行動異常」です。夢の中での動作が身体に伝わってしまう現象だと考えられています。
また、東北大の研究で、においが分かりにくくなる方が多いことも分かりました。レム睡眠行動異常や嗅覚の低下は、認知機能障害より何年も前に現れることも多いので、こうした症状に気付いた場合には注意して見守りましょう。
この病気には、まだ完全な治療法はありません。しかし、症状を和らげる薬は増えてきました。見えている幻覚に害がないと分かるだけで、落ち着いた生活を取り戻す方もいます。
私の祖父も晩年この病気にかかりましたが、レム睡眠行動異常が把握されていたこともあり、早い段階で診断につながりました。亡くなる間際まで落ち着いた生活を送れたのは、早期の適切な診断と治療のおかげと感じています。
症状に合った薬を処方してもらうための第一歩として早期の適切な診断は重要です。「今までと違う」兆候に気付いたら、近くの専門外来にご相談ください。
河北新報掲載:2026年2月27日
柿沼 一雄
(かきぬま かずお)
群馬県出身。2015年東北大学医学部卒業。仙台市立病院で初期研修後、東北大学病院高次脳機能障害科に入局。2023年KU Leuven留学。2024年東北大学大学院医学系研究科博士課程修了、同年より高次機能障害学分野助教。専門は神経心理学、認知症、失語症、てんかん。