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〔いのち)の可能性をみつめる

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歯科治療を受けるのが怖い

歯科麻酔疼痛管理科 科長 | 水田健太郎

全身麻酔法や静脈内鎮静法を用いた歯科治療

 「歯科治療を受けるのが怖い」のは、人間が持つ当たり前の感覚です。しかし中には、歯科治療に対する極度の恐怖心や嫌悪感から、歯科治療を全く受けることができない方がいます。また、歯科の治療器具がお口の中に入るだけで吐き気を感じてしまうために、歯科医院での治療を拒んだり歯科治療自体を諦めたりして我慢している方も多くいます。

 これらの症状のある方は、歯科を受診できないまま歯の痛みに耐え続ける結果、多数の歯が虫歯や重度の歯周病になってしまい、さらに歯医者に行くのが怖くなるという負のスパイラルに陥ってしまいがちです。

 このような方々にも安心して快適に歯科治療を受けていただくことができる方法として、「全身麻酔法」や「静脈内鎮静法」を利用した歯科治療があります。

2泊3日の入院

 全身麻酔法を用いた歯科治療では、全身麻酔薬で眠った状態で短期集中的に治療します。1回当たりの治療時間は長くなりますが、苦痛がなく、全く意識のないまま、最小限の回数でまとめて治療を終わらせることができます。東北大学病院では2泊3日の入院下での治療を行っています。お口の状態にもよりますが、通常1、2回の入院が必要です。

 一方、静脈内鎮静法を用いた歯科治療では、点滴から鎮静薬を投与することでウトウトした状態で治療を受けていただきます。歯科治療中はぼんやりとした意識はありますが、恐怖心が和らぎ、リラックスした状態で治療を受けることができます。この方法では入院の必要はありませんが、短期集中の治療はできません。通常1回当たり1時間程度の歯科治療を複数回受けていただきます。治療後は鎮静薬の効果が切れるまで、1時間程度休憩してから帰宅していただいています。

 東北大学病院では、年間約1000人の患者さんが全身麻酔法や鎮静法を利用しながら歯科治療を受けており、これらの方法を希望される患者さんは年々増加しています。

高い潜在ニーズ

 これらの治療法には健康保険が適用されます。全身麻酔法や鎮静法を用いた歯科治療は「ハードルが高い」と感じるかもしれませんが、潜在的なニーズは非常に高い治療法です。

 全身麻酔や鎮静法の安全性は近年向上していますが、特殊な技術が必要なため、専門のスタッフが常駐し、設備がしっかり整った大学病院や総合病院で治療を受けていただくことをお勧めします。

河北新報掲載:2021年7月9日
一部改訂:2025年4月18日

水田 健太郎
(みずた けんたろう)

北海道出身。1999年東北大学歯学部卒業。2003年東北大学大学院歯学研究科修了。コロンビア大学医学部麻酔科学講座博士研究員、東北大学歯科口腔麻酔学分野助教、講師、准教授を経て、2018年より東北大学歯学研究科歯科口腔麻酔学分野教授。

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