TOHOKU MEDICINE LIFE MAGAZINE

東北大学医療系メディア「ライフ」マガジン

TOHOKU UNIVERSITY SCHOOL of MEDICINE + HOSPITAL

〔いのち)の可能性をみつめる

TOHOKU MEDICINE LIFE MAGAZINE

TOHOKU UNIVERSITY SCHOOL of MEDICINE + HOSPITAL

〔いのち)の可能性をみつめる

スマホ時代の目の健康習慣

中澤徹(東北大学病院 眼科 科長)

近年、世界中で近視の人が急増しており、2050年には世界人口の約半数が近視になると予測されています。日本でもこの傾向は顕著で、特に子どもの近視が深刻な問題となっており、小学生の視力低下が目立っています。学校の教室で、以前よりも眼鏡をかける子どもが増えているのを実感する保護者の方も多いのではないでしょうか。

近視は単に「遠くが見えにくくなる」だけでなく、進行すると将来の目の病気のリスクが10倍以上に高まり、視力を大きく損なう緑内障や網膜剥離など重い目の病気につながる可能性があるのです。

近視の増加には、現代の生活習慣、特にデジタルデバイスの使用が大きく関係しています。人は近くを見るときには目の調節を行う筋肉(毛様体筋)に強い負担をかけて水晶体を膨らませ、ピントを合わせます。逆に、遠くを見るときには筋肉が休んでいる状態です。つまり、どの距離にピントを合わせるのかが重要となります。本を読むときの距離はおよそ33cmですが、スマートフォンでは20cm以下まで目に近づけて使用することが多く、これが近視を進める原因の一つとなっています。特に子どもは目の成長段階にあるため、こうした習慣の影響を受けやすいといわれています。

こうした影響は子どもだけでなく、大人にとっても無関係ではありません。仕事や趣味でスマートフォンやパソコンを長時間使う大人にも、目の疲れや首・肩のこり、うつむいた姿勢が続き、「ストレートネック」や「スマホ老眼(一時的なピント調節障害)」といった新たな健康問題につながることもあります。したがって、デジタルデバイスによる目のトラブルは年齢を問わず広がっているといえます。

では、目を守るために日常生活でできることには何があるでしょうか。まずは日常の中で目を休ませる習慣を取り入れることが重要です。例えば、30分に一度30秒程度、意識的に目を休める時間を設けることが重要です。作業の合間に窓の外の景色や空を見たり、室内でも2〜3m以上離れた場所に視線を向けたりすることで、毛様体筋の緊張がほぐれ、目の疲れが和らぎます。目の周囲を温めることもお勧めです。市販のホットアイマスクや蒸しタオルを瞼に当てることで血流が促され、眼精疲労が和らぐといわれています。また、自然光の中で過ごす時間を増やすことも、近視の進行を抑える効果があるとされています。日中はできるだけ外で過ごす時間を意識して確保し、子どもであれば1日2時間程度の屋外活動が理想的です。屋外で遊んだり、歩いたりすることで日光を浴び、近視の進行を抑えると考えられています。加えて、デジタル機器の使用時には画面と目の距離を30cm以上空けるように心がけましょう。また、部屋の照明が暗すぎたり、まぶしすぎたりすると目に負担がかかるため、照明の明るさにも気を配ることで、より快適な視環境が整います。

さらに、日々の食事も目の健康に深く関わっています。目に良いとされる栄養素としては、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ルテイン、DHAなどが挙げられ、緑黄色野菜、ブルーベリーやオレンジなどの果物、ナッツ類や鶏肉、青魚に含まれているといわれています。「これを食べれば目の病気が治る」という食材はありませんが、こうした食品を日々の食事に取り入れることは目の健康維持につながると考えられています。

スマートフォンやタブレットは、もはや生活に欠かせない存在となっていますが、それに頼りすぎることで目や体に負担がかかっていることも事実です。子どもには長時間の使用を避けるよう声をかけ、大人自身も「つい見すぎていないか?」と時々振り返ってみましょう。

小さな心がけが、目の健康を守る大きな力になります。未来の「見える」を守るために、家族みんなでできることから始めてみてください。ご心配なことがあれば、かかりつけの眼科にご相談ください。

中澤 徹
(なかざわ とおる)

山梨県出身。東北大学大学院医学系研究科博士課程を修了後、宮城県公立刈田綜合病院、米国ハーバード大学留学を経て、2011年東北大学大学院医学系研究科神経感覚器病態学講座・眼科学分野教授・東北大学病院眼科科長に就任。

※東北大学病院広報誌「hesso」54号(2026年2月27日発行)より転載

関連リンク
東北大学病院広報誌「hesso(へっそ)」