顔・顎の先天異常治療
金髙弘恭(東北大学病院 顎口腔機能治療部 部長)
2026.3.19 Thu
専門家がチームで支援
日常生活に影響
生まれつき頭や顔、顎に形の異常が見られる病気があります。代表的なのは、上唇や上顎に裂け目ができる「口唇裂・口蓋(こうがい)裂」で、先天的な顔や顎の病気で最も発症が多いとされています。ほかにも耳や顎の発育に影響が出る「第一第二鰓弓(さいきゅう)症候群」、顎が小さく呼吸や食事に影響が出る「ピエール・ロバン症候群」などがあります。
これらの病気は、見た目の問題だけでなく、顎の位置がずれてかみ合わせが悪くなることで、食べにくさや話しにくさなど、日常生活にも影響を与えることがあります。子どもが生まれ、こうした病気があると分かると、家族が将来を深く心配するのは当然です。
これらの病気は、風邪で内科に行く、虫歯で歯科に行く、といったように一つの診療科に数回通えば治るものではありません。
顔や顎の形の問題に加え、食べる・話すといった機能、さらには心理的な側面まで、多くの課題が複雑に関連しています。複数の専門家が協力してチーム医療で支える必要があり、それが可能な医療機関を受診することがとても重要です。
広い分野で連携
顔や顎の手術を担当する形成外科医や口腔(こうくう)外科医、口蓋裂に伴って起こりやすい中耳炎を治療する耳鼻咽喉科医、歯並びを整える矯正歯科医、発音の訓練を行う言語聴覚士、心のケアを担う臨床心理士などが連携し、治療を進めます。出生後から通院し、発育の様子を確認しながら、その時期に必要な治療を行うことで、顔の形やかみ合わせを大きく改善できます。
通常、矯正歯科治療は自費診療になることが多いですが「厚生労働大臣が定める疾患」に起因する咬合(こうごう)異常の場合は、保険が適用されます。本年度時点で顔・顎の先天異常など66疾患が対象です。保険適用のためには、厚生労働省が定める施設基準を満たした医療機関の受診が必要です。
また「育成医療」「更生医療」といった公的な支援制度の指定医療機関であれば、自己負担額をさらに軽減できる場合もあります。
対象となる病気や、診療に携わる専門医、チーム医療を行う医療機関などの情報は日本口蓋裂学会、日本矯正歯科学会、日本頭蓋顎顔面外科学会などのホームページに掲載されています。不安や疑問を抱えた際には、こうした情報を参考にしながら相談しましょう。
河北新報掲載:2026年1月9日
金髙 弘恭
(かねたか ひろやす)
神奈川県出身。1993年東北大学歯学部卒業。東北大学、米国イリノイ大学シカゴ校などを経て、2020年より東北大学歯学研究科共創歯学分野教授、2025年より東北大学歯学研究科顎口腔矯正学分野教授に就任し、現職を兼任。専門は歯科矯正学。