眼精疲労とブルーライト障害
中澤徹(東北大学病院 眼科 科長)
2025.11.14 Fri
就寝前くつろぐ習慣を
新型コロナウイルス禍によって一層、ディスプレーを見る時間が増えている今、頭痛や肩凝り、いらいら、めまいなどがひどくなっていませんか? それらの不調は目の使い過ぎによる眼精疲労が原因かもしれません。
脳と筋肉の違和
人は、脳や神経が疲れをじかに感じるのではなく、脳神経からの命令と、それを受けて作動する筋肉の興奮のバランスが合わないときに、その違和感を疲れとして感じると考えられています。つまり、脳からの指示通りに身体が動いてくれないアンバランスが疲れなのです。
近くを見る時にはピントを合わせる筋肉を収縮させレンズの厚みを調節しており、それが長時間にわたると目の筋肉が収縮し続け、血流も低下し硬くなります。肩凝りのような状態です。そして、脳からの「見なさい」という命令に素直に従って物を見ることが難しくなると、眼精疲労を感じ、それが全身に影響を及ぼします。
目から全身の疲労につながるもう一つの要因が、ブルーライトです。われわれは朝、目覚めた時、朝日に多く含まれるブルーライトを浴びて活動モード(交感神経の活性化)に切り替わります。一方、夜は自然と副交感神経が優位になり、疲れを癒やす方向に変化します。ところが、最近のパソコンやスマートフォンのディスプレーはブルーライトを多く放出するため、夜にそれらを見ることで、本来休むモードに切り替わるはずの脳を強制的に起こしてしまいます。その結果、睡眠が浅くなり、疲れがたまっていくのです。
定期的に軽運動
皆さんが寝る前に必ず歯磨きをするのは、虫歯を防ぐために習慣となっているからです。目についても、疲れをその日に解消するための習慣付けをすべきだと考えます。例えば、少し汗ばむ程度の定期的な運動、湯船に浸って行う頭皮マッサージ(頭頂部やこめかみ、頭と首の付け根など)、調節力の改善に有効なサプリメントや目薬の服用などです。寝る前にはパソコンやスマホから離れ、ハーブティーや音楽によってリラックスする時間をつくりましょう。
目のケアをする重要性をご存じの方は少ないと思いますが、目の疲れを放置するとピントを合わせる能力や目全体の血流が低下し、自律神経も乱れてしまいます。そして、身体の不調や慢性疲労を自覚するようになり、対処しないと、日本人の失明原因第1位である緑内障という怖い病気を誘発することさえあります。すてきなものや興味あるものを一生、見て読んで楽しむために、毎日酷使している目をいたわることが大切です。
河北新報掲載:2022年4月8日
中澤 徹
(なかざわ とおる)
山梨県出身。東北大学大学院医学系研究科を修了後、山形市立病院済生館、国立長寿医療センター、宮城県公立刈田綜合病院、米国ハーバード大学留学、東北大学大学院を経て、2011年東北大学大学院医学系研究科神経感覚器病態学講座・眼科学分野教授に就任。