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東北大学医療系メディア「ライフ」マガジン

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〔いのち)の可能性をみつめる

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臨床研究をさらに前へ。
相談型支援、加速中。

包括的相談支援と臨床研究の情報一元化で、臨床研究を加速

2015年、東北大学病院は医療法上の「臨床研究中核病院」の指定を受けた。日本発の革新的な医薬品・医療機器を創出する研究・開発拠点としての責務と使命がある。
「臨床研究中核病院には、要件があります。もちろんその高い基準をクリアすること自体が目的ではありませんが、本院内では臨床研究環境に対する課題や障壁も散見され、2023年に病院長直轄のタスクフォースが設置されました。支援体制を見直し、取り組みをさらに前進させるため、翌年、本院臨床研究推進センター(CRIETO)内に『臨床研究パートナー部門』が置かれました」と語るのは同部門長の笠井宏委(東北大学病院臨床研究推進センター特任教授)だ。
まず着手したのは、研究者が相談しやすい体制と臨床研究に関する情報の一元化と可視化、これらのための研究者フレンドリーなウェブサイトの構築である。「これまでは情報が各所に散らばっており、研究者が困ったときにどの扉を叩けばよいのかわからない状況でした。そこで学内限定の『臨床研究お役立ちサイト』を公開し、バナーをクリックするだけで、迷わず最初の窓口にたどり着ける仕組みを整えました」と笠井。同部門は、新薬・新規医療機器等の開発を目的とした実用化研究から診療の最適化(エビデンス創出)を探る研究まで幅広い領域を対象とし、エビデンス創出研究については「臨床研究よろず相談」と「臨床研究パートナー制度」という2本柱で、着想から出口戦略に至るまでの包括的な支援を展開する。同部門が掲げるコンセプトは「相談型支援」だ。

“ブラックボックス”的プロセスを、臨床研究パートナーチームが支え抜く

「『臨床研究よろず相談』は、その名の通り、あらゆる課題を受け止める“門戸の広さ”が特徴です。研究者から寄せられるいろんなご相談には、相談内容を明確化したうえで、想定される最適解を回答するよう努めています。研究者がどこに相談したらよいかわからないというご相談も、必要に応じて担当部署に協力を要請し対応しています。」
一方、「臨床研究パートナー制度」においては、臨床研究法の研究を対象として、1.プロトコル骨子の立案、2.オペレーションと実施体制の構築、3.臨床研究審査委員会への申請といった主に3つのステップと、倫理審査委員会や病院長の実施許可申請といった手続き支援で伴走していく。笠井は続ける。「第一段階の計画立案では、現場のClinical QuestionをどうResearch Questionに展開するか、気兼ねない壁打ち的なディスカッションを通じて練り上げていきます。実施体制の構築においては、チーム編成・予算調達管理・施設選定といった運営基盤づくりから、企業との契約設計、COI(利益相反)への適切な対応まで、煩雑な実務が相手。倫理審査委員会に臨むにあたっては、厳格な指摘を乗り越えるための論理の組み立てなど、研究者と一緒に検討していきます」。これらはスタディマネジャーの経験者や、試験統計家などのパートナーチームが支える。
立ち上げから2年、成果はすでに現れ、相談件数、臨床研究法に基づく研究が増えてきた。その陰には「センター長とともに、すべての研究室を訪ね歩き、研究のシーズを探りつつ、本制度の活用を呼び掛けた」という地道な努力がある。
「臨床家の気づきをいかに研究として推進するかを通して、より有効で安全な新しい医療を未来へ届けることに貢献していきたい」と笠井。臨床研究パートナーによる相談型支援は、これからも研究者の最良の伴走者として、ゴールのその先を目指していく。

専門家との伴走で、研究に新たな推進力を
放射線治療科/科長 教授 神宮啓一

臨床研究を立ち上げる際、まず直面するのが「法規制が複雑化する中、自分の研究が特定臨床研究に該当するのか」という判断です。今回、臨床研究パートナー部門の専門家から、豊富な先行事例に基づく的確な意見をいただけたことで、早期の段階で研究の方向性を確定することができました。
特に心強かったのは、試験統計家(臨床試験データセンター)によるアドバイスです。必要な症例数の算定など、独力では限界がある高度な専門知見は、研究の信頼性を担保する上での礎となりました。また、プロトコルを作成する過程で得られる第三者の視点や意見は、多くの気づきをもたらしてくれます。研究を円滑に進めるための具体的な「コツ」も指南いただき、独善的ではない、より質の高い研究へとブラッシュアップされる実感がありました。
若手の先生方にとって、ゼロから研究の設計図(実施計画書)を立ち上げるのは、高いハードルかもしれません。しかし、本制度のような伴走支援をうまく活用すれば、無理なく草案を形にでき、研究の幅は確実に広がります。
私が「臨床研究パートナー制度」を利用したきっかけは、病院運営会議での案内でした。院内での広報がさらに進み、東北大学病院全体でより多くの特定臨床研究が芽吹いていくことを期待しています。

臨床の「問い」を、確かな「研究」へ。
東北大学病院/作業療法士 安宅航太

臨床家にとって、日々の診療からクリニカルクエスチョンを着想することは日常です。専門領域で常に思考を巡らせているからこそ、改善への気づきや仮説を立てるプロセスは、むしろ得意とするところかもしれません。
しかし、その「問い」を実際の「研究」として形にするまでには、非常に高い壁が存在します。日常業務にはない専門知識と膨大なエフォートを前に、「忙しいから無理だ」と葛藤することは、私を含めた多くのスタッフが共通して体験していることだと思います。
部門の先行事例や教授の後押しで利用させていただいた臨床研究パートナー制度は、まさにその苦手なプロセスを補完し、アイデアを具体的な計画へと昇華させてくれるものでした。書面の作法や統計のノウハウ提供はもちろん、相談者の事情に合わせたビデオミーティングなど、常に研究者側の視点に立った柔軟で細やかな支援に救われました。
最も印象的だったのは、議論全体を通して「どうすれば実現できるか」と常に建設的に向き合う姿勢です。「頭の中で浮かんでは消えてしまうかすかな疑問」を「よりよい診療へつながる確かな医療の一歩」へと架橋してくれる存在。臨床家にとって、これほど心強い伴走者はいないと確信しています。

関連リンク
東北大学病院臨床研究推進センター広報誌「CRIETO Report vol.39」(PDF) 東北大学病院臨床研究推進センター 臨床研究パートナー部門

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