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〔いのち)の可能性をみつめる

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医師の家族たるもの

印度カリー子

 実は、私の夫は麻酔科医だ。彼がまだ研修医だった頃、私の誕生日を一緒にお祝いするために、駅で待ち合わせをしようとしたことがあった。約束の時刻を過ぎても、待ち合わせ場所に現れず、夜遅くまで待ったあと、私はひとりで家に帰った。
 23時にやっと帰宅した夫は、涙を流しながら、「突然、緊急手術が入ってしまって、帰ってこられなかった」と語った。普段はあらゆる感情に対して強い彼が見せた初めての姿だった。
 あとから、「大切な人を助けたくて医師になったのに、目の前にいる、一番大切な人を幸せにできなかった。それが悔しかった」と涙の理由を教えてくれた。
 私は、最初こそ寂しく思ったが、もしその手術を受けたのが、母だったとしたらと想像すると、それを断って彼に帰ってきてほしいとは思わなかっただろう。その時〝医師の家族になる〟という覚悟が、私の中に芽生えた。
 今も夫は、朝は早く夜は遅く、休みも少なく働いている。私は、その姿をそばで見ながら、それでも誰かの命を支え続けているたくさんの医師たちを思い、日々、心から感謝している。

印度 カリー子

1996年、仙台市出身。スパイス料理研究家兼タレント。スパイス初心者のための専門店 香林館(株)代表取締役。「スパイスカレーをおうちでもっと手軽に」をモットーに、オリジナルスパイスセットの開発・販売やレシピ本執筆、テレビ出演など幅広く活動。『おのこりスパイス5種でリピ決定おかず』(主婦と生活社)など著書多数。

※東北大学病院広報誌「hesso」50号(2025年6月30日発行)より転載

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