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〔いのち)の可能性をみつめる

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草彅裕《水を伝う 玉川毒水》より(部分)

《水を伝う 玉川毒水》草彅裕

写真家・秋田公立美術大学准教授

LIFE GALLERYは、1人のアーティストに焦点をあて、その作家の作品をトップページのカバーアートとして紹介するページです。今回は、2025年8月からの特集テーマである「水」と連動して、写真家・秋田公立美術大学准教授の草彅裕さんの写真作品を紹介します。

草彅さんは水の写真を数多く撮られていますが、そもそも水を撮影するようになったきっかけは何でしょうか?

物心ついた頃から水遊びが好きで、水の素材的な魅力や透明感に惹かれていました。大学に進学し絵画を専攻するようになってからは、水が持つ偶然性や滲みの表現に興味・関心をもつようになっていきました。水は流動的で定まった形態がなく、そして透明で色がない…。そういった意味でいうと、水というのは「目に見えないもの」の象徴なのかもしれません。やがて写真を撮るようになり、写真自体が持つ「瞬間を切り取る」という特性と、目に見えないものを撮る(=水を撮る)ということが結びつくと感じ、自ずと水の撮影を行うようになっていきました。

草彅裕《水を伝う 玉川毒水》より

今回、掲載した写真は草彅さんの地元である秋田を流れる玉川とのことですね。

もともと故郷である秋田を流れる川を撮影したいと思っていました。東日本大震災の後、人間と自然のつながりを改めて考えるようになり、秋田の川を調べるようになった中で、玉川の上流に日本最大の酸性水が湧き出る場所があることを知り、その青い水の色と造形に惹かれ、下流までの変化を撮影したいと思いました。

草彅裕《水を伝う 玉川毒水》より

川の水はやがて海へと注ぎますが、川と海が混ざり合う汽水域の写真も撮られていますね。

海については、川の続きや終着点として捉えていますね。玉川の汽水域も撮影しているのですが、そこでは小石に着目しています。川の上流には大きな岩があり、それが水によって下流へと流され磨かれながら小さな小石になり、汽水域にたどり着いていると思うのですが、石(岩)が姿形を変えながら行き着いた先に、「海」という別世界との出会いがあるというのが面白いですね。なんというか自分自身の「いのち」との出会いという感じにも思えます。

草彅裕《水を伝う 玉川毒水》より

この〈LIFE〉というwebメディアに関連して、命や生命についての考えをお聞かせください。

水を通じて命も含めて全てがつながっているという感覚でいつも撮影をしています。戦時中の話ですが、田沢湖に玉川の毒水を流し込んだことで、田沢湖に生息する固有種のクニマスが絶滅したという歴史があります。また、言うまでもないですが川の水は生活用水や農業用水としても使われ生活と直結しています。このように水と人間の営み、そして生き物の命というものも水を通じて全てつながっています。写真には直接写らないかもしれませんが、そういった生命の営みや命のつながりを写真によって「すくい上げる」ことができればと思っています。

Text:アイハラケンジ

2025年7月1日(火)~ 9月21日(日)まで、仙北市立角館町平福記念美術館にて、草彅裕写真展「水を掬ぶ」が開催中です。詳しくは、以下のページをご確認ください。
https://www.akita-museum.com/osirase_event_datail.php?serial_no=238

草彅裕(くさなぎ ゆう)

秋田県仙北市出身。東北芸術工科大学大学院芸術工学研究科修了。生まれ育った秋田県内の自然や風土を、写真でしか捉えることのできない不可視の「瞬間と循環」を主題として撮影。秋田を拠点に国内外で多数の個展、グループ展に参加している。
写真集として、『Flow/Glow』(2024年、秋田市・DJG Passau)、『水を伝う 玉川毒水』(2022年、クレヴィス)、『PEBBLES』(2021年、CANON GINZA presents SHINES)、『SNOW』(2016年、FOIL)。
主な個展として、「水を掬ぶ」(2025年、仙北市立角館町平福記念美術館/秋田県)、「水を伝う」(2022年、FUJIFILM PHOTO SALON Space2/六本木)、「N.E.blood 21 vol.77 草彅裕展」(2021年、リアス・アーク美術館/宮城県)、「流転の水系」(2019年、仙北市立角館平福記念美術館/秋田)、「ACID WATER ─流転の水系─」(2018年、キヤノンギャラリー/銀座・大阪・名古屋)、「SNOW」(2016年、コニカミノルタプラザ/新宿)、「arkhē ~水と太陽~」(2007年、コニカミノルタプラザ/新宿)。

https://yu-kusanagi.com/

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