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〔いのち)の可能性をみつめる

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顎のゆがみ、どうして?

山内健介(東北大学病院 歯科顎口腔外科形態機能グループ 科長)

咬合異常や腫瘍の恐れ

治療要る場合も

 顔の輪郭が気になる方は多いと思います。より美しく魅力的な顔を求めて美容医療に関心を持つ方もいるでしょう。しかし、目から下の輪郭のゆがみや非対称は、かみ合わせの異常や顎の骨の腫瘍など、病気に起因する場合もあります。

 顎の変形には、先天的なもののほか、転倒による顎(がく)関節の外傷や、うつぶせ寝・頬づえといった習慣に起因するものもあります。こうしたゆがみは、前歯がかみ合わない、片側の奥歯がうまくかまないなどの咬合(こうごう)異常として現れ、開口障害や片頭痛などの症状を伴うことも少なくありません。

 かみ合わせの異常は歯の負担に片寄りを生じさせ、歯の寿命に影響を及ぼします。そして、歯の修復や欠損時の治療に制限が出ることもあります。

 このような顎の形態変化を伴ったかみ合わせの異常があると「顎変形症」と診断されることがあります。その場合は、歯科矯正と、顎の骨の形態異常を改善する顎矯正手術を組み合わせた治療が必要になります。

 ほとんどのケースは矯正と手術の両方が保険適用となります。厚生労働省が認可した矯正歯科と口腔(こうくう)外科の両方を受診して治療することができます。

変化はゆっくり

 顎の骨に腫瘍ができた場合にも顔のゆがみが生じることがあります。顎の骨の中にできる腫瘍の多くは無症状で、比較的ゆっくりと頬や顎が片側だけ膨らむなどの変化として現れます。歯科医院などのエックス線撮影で偶然発見されることもしばしばです。

 また、耳の前にある顎関節に腫瘍ができた場合にも顎や顔のゆがみが現れることがあります。顎の片寄りや前歯のずれなど、かみ合わせの変化がゆっくりと生じることが特徴です。いずれの場合にも、原因である腫瘍の切除手術が必要です。術後にかみ合わせの治療が必要になることもあります。

 当院の歯科顎口腔外科では、いずれの手術でも、術前に撮影したCT画像を用いて3次元的な形態評価を行っています。そして、手術による形態変化を予測して計画を立てた上で、手術中はナビゲーション機器を活用して精度の高さを保つよう努めています。

 形態のみならず、かみ合わせも考慮した集学的治療を行っていますので、気になる症状がある方は、どうぞ気軽にご相談ください。

河北新報掲載:2025年5月23日

山内 健介
(やまうち けんすけ)

宮城県仙台市出身。2001年東北大学歯学部を卒業後、九州歯科大学口腔外科学第二講座入局。2011年〜2012年にオランダのマーストリヒト大学頭蓋顎顔面外科学講座に留学。2012年より東北大学歯学研究科顎顔面・口腔外科学分野に入局し、2013年に東北大学病院歯科インプラントセンターの副センター長に就任。2022年東北大学歯学研究科顎顔面口腔再建外科学分野教授に就任。

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