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〔いのち)の可能性をみつめる

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長引く咳や血痰に注意~肺非結核性抗酸菌症

山田充啓(東北大学病院 呼吸器内科 副科長)

放置で呼吸困難の恐れも

早期発見が大切

 「肺非結核性抗酸菌症」という病気をご存じでしょうか。結核菌の仲間ですが結核とは異なる「非結核性抗酸菌」が肺に感染して起こる、慢性の呼吸器感染症です。患者数は近年急増し、排菌を伴う肺結核の罹患(りかん)率を上回っています。原因菌の約9割はアビウム菌とイントラセルラーレ菌と呼ばれる菌で、浴室や土壌など身の回りの水や土に広く生息しています。人から人にうつることはありません。菌を含んだ水滴やほこりを吸い込むことで感染すると考えられており、特に中高年の痩せ型の女性に多いことが知られています。

 初期には症状がないことが多く、健康診断の胸部エックス線やCT検査で偶然見つかる方も少なくありません。進行すると、長引く咳(せき)や痰(たん)、血痰(けったん)が現れることがあります。さらに悪化すると疲れやすさや体重減少を感じるようになり、呼吸困難を引き起こすこともあります。多くは数年から10年以上かけてゆっくり進行する病気で、放置すると肺が徐々に壊れていくため、早期発見が大切です。

治療は抗菌薬服用

 診断には痰を培養して非結核性抗酸菌を確認する検査が必要で、原則2回以上同じ菌が検出されることが条件です。結果が出るまで6週間ほどかかることもあります。痰が出ない場合は気管支鏡検査を行います。血液検査で菌に対する抗体を調べることも診断の助けになります。

 治療は複数の抗菌薬を長期に服用する治療が基本。出した痰から菌が培養されなくなった後、少なくとも1年間の服用が必要です。飲み忘れや自己判断での中断は薬が効かなくなる「耐性化」を招く原因となります。最近、標準治療で効果が不十分な場合に追加できる吸入抗菌薬治療が登場しました。専用の吸入器で肺の奥まで薬を届ける新しいタイプの治療薬で、選択肢が広がりつつあります。

 現時点で確立した予防法はありません。菌が住みつきやすいとされる浴室やシャワーヘッドをこまめに清掃し、使用後はなるべく乾燥させること、風呂掃除やガーデニングの際にマスクを着けて水しぶきや土ぼこりを吸い込まないようにすることが、感染リスクを下げる可能性があると考えられています。2週間以上続く咳や痰、または血痰が見られたら放置せず、早めに医療機関を受診してください。

河北新報掲載:2026年4月24日

山田 充啓
(やまだ みつひろ)

東京都出身。1996年東北大学医学部卒業。2002年東北大学大学院医学系研究科修了後、米国ケースウエスタン大学研究員、ノースカロライナ大学研究員、東北大学病院助教、講師等を経て、2025年より東北大学病院 呼吸器内科 准教授・副科長。専門分野は呼吸器感染症、慢性閉塞性肺疾患、気管支喘息。

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