手指の変化注意~全身性硬化症(強皮症)
浅野善英(東北大学病院 皮膚科 科長)
2026.8.14 Fri
治療法・新薬の開発進む
寒い環境で指先がさっと白くなった、冷たくなってしびれや痛みを感じた-。こんな経験をしたことはありませんか? これはレイノー現象という症状で、成人の2~4%に見られます。
その多くはレイノー病(手指の血管が一時的にけいれんして収縮する病気)で健康に影響はないのですが、一部の人(10~20%)では全身性疾患の部分症状としてレイノー現象が生じます。その代表的な疾患の一つが全身性硬化症(強皮症)です。
自己免疫が原因
「強皮症」は皮膚が硬くなることが特徴ですが、肺、心臓、消化管なども硬くなる「全身性」の病気です。本来細菌やウイルスに対して働く免疫が誤って自分の細胞を攻撃する自己免疫が原因となり、コラーゲンなど細胞外基質が皮膚や内臓に蓄積して、線維化という硬くなる変化を起こし、さまざまな臓器の機能が徐々に低下していきます。
レイノー現象は初発症状として最も多く、手指のこわばりやむくみが初発症状となる場合もあります。爪の甘皮の部分に点状出血が見られるのも特徴の一つです。
手指の症状はむくみから硬さへと変わり、手の甲から前腕、上腕に、つまり体の中心に向かって皮膚の変化が進み、顔にも同様の変化が生じ、症状が強い場合は胸部や腹部にもおよびます。指先に治りにくい傷(指尖(しせん)潰瘍)ができることもあります。
一般に皮膚症状の範囲が広いほど内臓病変も重く、間質性肺疾患、胃食道逆流症、肺動脈性肺高血圧症、不整脈、吸収不良症候群などさまざまな合併症を伴います。特に間質性肺疾患と肺動脈性肺高血圧症は、命にかかわる合併症です。
重症度さまざま
全身性硬化症(強皮症)の原因は不明で、国の難病に指定されています。症状は極めて多様で、重症度も患者ごとに異なります。軽症でほとんど治療が必要ない方もいれば、発症早期から内臓病変が進行し、早期から強い治療が必要になる方もいます。
軽症だと思っていたら、発症して10~20年経過してから重篤な内臓病変が出て来るような場合もあります。この病気と診断されたら、重症度に関わらず定期的に通院し検査を受ける必要があります。
症状が強い患者には、ステロイドや免疫抑制薬、抗体医薬によるB細胞除去療法など、自己免疫を抑えるための治療が行われます。間質性肺疾患に対しては線維化を抑える飲み薬、指尖潰瘍には予防効果のある飲み薬があります。
現在さまざまな治療薬の開発が進められておりますが、なかでも注目されているのが、血液がんの治療から発展した「CD19 CAR-T細胞療法」です。患者自身の免疫細胞であるT細胞を加工して、自己免疫に深く関わるB細胞を強力に除去し、免疫の働きをいったん「リセット」することを目指します。重症で従来の治療が効きにくい少数の患者を対象とした臨床試験では、皮膚の硬さや肺機能の改善・安定化が報告されています。ただし、現時点では研究段階であり、感染症や発熱などの副作用、効果がどのくらい続くか、どのような患者に適しているかを、今後さらに確かめる必要があります。
河北新報掲載:2023年9月8日
一部改訂:2026年8月14日
浅野 善英
(あさの よしひで)
東京都出身。1998年東京大学医学部卒業。2004年東京大学大学院修了、医学博士。サウスカロライナ州立医科大学研究員、東京大学大学院医学系研究科皮膚科学講師、同准教授を経て、2022年より東北大学大学院医学系研究科皮膚科学分野教授、東北大学病院皮膚科科長。