大腸がん手術後、生活の質は?
佐藤好宏(東北大学病院 総合外科 下部消化管グループ 助教)
2026.10.2 Fri
変化知り、納得の治療を
影響は部位次第
大腸がんは便に血が混じる、便秘や下痢が続く、便が細くなる、腹部に違和感があるといった症状で見つかることがあります。一方で早期には自覚症状が乏しく、検診の便潜血検査や大腸内視鏡検査で発見されることも少なくありません。
診断されると、がんの深さや広がりによって治療方針が決まります。早期であれば内視鏡で切除できることもありますが、進行している場合やリンパ節転移が疑われる場合には外科手術が必要になります。
では、手術後の生活の質はどう変わるのでしょうか。大腸がんと一口に言っても、がんができる場所によって術後の影響は大きく異なります。一般に、直腸以外の結腸がんでは永久的な人工肛門が必要になったり、生活に支障をきたす排便障害が長く残ったりすることは多くありません。多くの方は回復期間を経て、食事や排便のリズムを整えながら日常生活に戻っていきます。
一方、肛門に近い下部直腸がんは注意が必要です。直腸は便をため、排便を調節する働きに関わり、その周囲に排尿や性機能に関係する神経が走っています。骨盤の深い場所でがんを切除する手術の際は、がんを確実に取り除くことに加え、術後の排便、排尿、性機能への影響も考える必要があります。
術後の支援重要
私たちが手術の方法ごとに術後の機能を比べた研究でも、肛門に近い直腸がんほど便が近い、何度もトイレに行く、便意を我慢しにくい、残便感があるといった排便障害が起こりやすいことが分かりました。永久的な人工肛門(ストーマ)となる手術の後は、排尿症状にも注意が必要でした。症状の程度に個人差がありますが、外出や仕事、睡眠、心理面に大きく影響することもあります。手術前から起こり得る変化を知っておくことは、納得して治療を選ぶ助けになります。
大切なのは、術後の不調を「仕方がない」と一人で抱え込まないことです。薬による調整、食事や排便習慣の工夫、骨盤底筋体操、ストーマ外来や専門看護師の支援などで、生活しやすくなることがあります。大腸がん治療では、がんを治すことだけでなく、その後の生活を見据えた治療選択と支援が重要です。不安な症状や希望は、遠慮せず主治医に早めにご相談ください。
河北新報掲載:2026年8月14日
佐藤 好宏
(さとう よしひろ)
岩手県出身。2008年東北大学医学部卒業。2016年東北大学大学院医学系研究科博士課程修了。白河厚生総合病院、石巻赤十字病院、東北医科薬科大学病院勤務を経て、2025年より現職。