胃酸が食道に逆流
小池智幸(東北大学病院 消化器内科 副科長)
2026.10.23 Fri
食生活の見直しも重要
胃食道逆流症は、主に胃酸が食道へ逆流することにより、胸やけや呑酸(どんさん)(酸っぱい液体が上がってくる感じ)などの不快な症状を感じたり、食道の粘膜がただれたりする病気です。さらに胸痛、慢性的なせき、ぜんそく、喉の炎症やポリープ、睡眠障害、副鼻腔(びくう)炎、中耳炎などを引き起こすこともあります。近年増加しており、国内では成人の10~20%がかかっています。
内視鏡で検査を
診断は、主に自覚症状と上部消化管内視鏡検査(いわゆる胃カメラ)で行い、食道粘膜のただれを認めれば「逆流性食道炎」と診断されます。食道がんなどの他の病気ではないことを確認するためにも一度は内視鏡検査を受けることをお勧めします。
一方、胸やけはあるが食道がただれていない場合は「非びらん性逆流症」と診断されますが、わずかな胃酸や空気の逆流などでも強い症状を感じるため、症状が改善しないことも多いです。専門施設で症状の原因を評価する特殊な検査(インピーダンスpHモニタリング検査など)で診断する必要があります。
その結果、逆流と症状出現に関連のない「機能性胸やけ」、食道の動きの障害と関連のある疾患、「好酸球性食道炎」といった特殊な食道炎が診断されることがあり、適切な治療に結び付けることができます。
生活面で避けた方がよいものとして、(1)腹部の締め付け(2)重い物を持つ(3)前かがみの姿勢(4)右を下にして寝る(5)肥満(6)喫煙-などが挙げられます。また、食べ過ぎや就寝前の食事、高脂肪食、チョコレートなどの甘いもの、アルコール、コーヒー、炭酸飲料、みかんなどのかんきつ類などは、なるべく控えるようにしましょう。
薬で酸分泌抑制
薬物治療としては、胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬や、より強力に酸分泌を抑えることができるカリウムイオン競合型アシッドブロッカーなどが使われます。そのほかに酸を中和したり、粘膜を保護したりする薬や、胃の内容物の逆流を抑えるための薬(消化管運動改善薬や漢方薬)を一緒に使うこともあります。
薬による治療で改善が得られない場合、胃酸の食道への逆流を防ぐための手術が必要なこともあり、体の負担が少ない腹腔(ふくくう)鏡手術が広く行われています。
胃食道逆流症は命に関わる病気ではありません。しかし、胸やけ症状が日常生活にさまざまな影響を及ぼし、仕事がはかどらなくなったり、会社を休んでしまったりする場合もあります。
よりよい生活を保つためにも、早めに正しい診断を受け適切な治療を始めることが必要でしょう。
河北新報掲載:2023年12月8日
一部改訂:2026年10月23日
小池 智幸
(こいけ ともゆき)
1992年 弘前大学医学部医学科卒業、いわき市立総合磐城共立病院(現 いわき市医療センター)にて研修、2000年 東北大学大学院医学系研究科 卒業. 2016年 東北大学病院 消化器内科 准教授、2024年 光学医療センター副センター長 併任. 専門は、上部消化管疾患、内視鏡診断および治療、がん検診. 日本消化器がん検診学会 理事/東北支部長 日本消化器内視鏡学会東北支部長