治療したのに痛みが残る
鎌野優弥(東北大学病院 歯内療法科 講師)
2026.9.25 Fri
外科的な処置も選択肢
歯の根っこに持続的な痛みを伴う「根尖性(こんせんせい)歯周炎」という病気があります。虫歯を放置すると歯の中の神経(歯髄)に炎症を起こし、痛みが生じます。虫歯をさらに放置すると根っこの中が細菌に侵されてしまいます。この細菌が根っこの先に炎症を引き起こすことにより根尖性歯周炎が発症します。
細菌の塊が原因
一般的な根尖性歯周炎の治療としては、根管治療と呼ばれる処置が行われています。根っこの内側の細菌の数を限りなくゼロにするため、炎症した歯髄などを取り除く治療法です。近年、歯科用の顕微鏡やCT撮影装置などの進歩に伴い、昔なら治らなかった根尖性歯周炎も治療できるようになってきました。しかし、適切に処置をしても治らない根尖性歯周炎があります。
その多くは、側枝(そくし)と呼ばれる複雑な根っこの形状のために残った細菌が増えて、根っこの先から外に飛び出してできた細菌の塊が原因です。根管治療をしたのに痛みや違和感などの症状が続くことがあるのはこのためです。こうした状態になってしまうと、根っこの内側の治療では細菌を取り除くことができず、抜歯を選択せざるを得なくなることもあります。
通常の根管治療では治癒しない根尖性歯周炎に対して、すぐに抜歯を選択するのではなく、当科では外科的な治療「歯根端(しこんたん)切除術」もしくは「意図的再植術」を行っております。
歯根端切除術は、歯茎を切開して、感染している歯の根っこの先端を3ミリ程度切り取り、硬い材料(セメント)で封鎖することで炎症を食い止める処置です。
歯根端切除術に関しても近年の歯科用顕微鏡や歯科用材料の開発によって手術がやりやすくなっており、9割ほどの根尖性歯周炎が治るとされています。一般的に前歯や小臼歯までの歯が対象ですが、場合によっては大臼歯も可能なことがあります。
意図的再植術は主に大臼歯に適応されるもので、一度歯を抜いて感染した根っこの先を切除してセメントで封鎖した後に再度植えなおす処置のことです。歯の根っこを真っすぐ抜いてくる必要があるため、大臼歯であってもできないことはありますが、歯根端切除術が難しい部位の外科的な治療として用いられています。
抜歯前に相談を
歯茎を切ったり、骨を削ったりと多少大がかりな処置にはなりますし、歯の根っこが短くなるというデメリットはあります。実際に手術をしてみると歯が割れていて抜歯になることもないとは言い切れません。それでも大事な歯を残すため、抜歯の前に外科的治療について一度相談してみてください。
河北新報掲載:2023年11月10日
鎌野 優弥
(かまの ゆうや)
大阪府生まれ。2010年大阪大学歯学部卒業。2015年大阪大学大学院歯学研究科修了。東北大学助教、厚生労働省東北厚生局(北海道厚生局併任)再生医療等推進専門官を経て2023年より現職。専門は歯科保存学および再生医療。