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〔いのち)の可能性をみつめる

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治らない口内炎…口腔がんの恐れ

杉浦剛(東北大学病院 歯科顎口腔外科 科長)

定期的受診で早期発見

 痛くてしみる口内炎。誰もが経験していると思います。

 口内炎の多くは、気付かないうちに付いている粘膜の傷が原因で、傷のほとんどは歯によるものです。栄養状態や免疫の低下で傷の治癒が遅れると、細菌が入り込み口内炎になってしまいます。似たような場所にできるのはこのためです。「体調が悪いとできる」「周期的にできる」のはこうした体側の要因が重なっているからなのです。

 口内炎は7~10日もすれば治癒しますが、「治らない口内炎」があることを知っていますか? 実はこの中に口の中のがん(口腔(こうくう)がん)もしくは、口腔がんの前段階(口腔潜在的悪性疾患)が隠れています。舌の横、歯茎、頬にできやすいとされています。

「痛くない」に注意

 治らない口内炎の特徴は「痛みがない」ことです。通常の口内炎は、粘膜の表側がなくなってしまうこと(潰瘍)で末梢(まっしょう)神経が痛みを発します。一方で口腔がんやその前段階では、粘膜の表側の細胞が「がん細胞」に変化して増えてくるので、初期には抹消神経には影響が出ず、「痛くない口内炎」となるのです。

 ただし、口腔がんが進行すると抹消神経をがん細胞が破壊しますので「激烈な痛み」に変わります。つまり、「痛くない口内炎」のうちに発見して治療しないといけないのです。

 日本人の口腔・咽頭がん罹患(りかん)率は人口10万人当たり男性14.9人、女性5.7です。残念ながら、宮城県の罹患率と死亡率は全国平均を上回っており悪化傾向です。口腔がんが進行した段階で発見されているのです。

 口腔がんは、粘膜への慢性的な刺激による細胞のダメージに加え、細菌・カビ・ウイルス感染により粘膜細胞の遺伝子変化が重積して起こります。慢性的な刺激は、喫煙・飲酒に加え、虫歯や合わない入れ歯・歯の詰め物の脱落、歯周病の放置、口の不衛生が原因となります。つまり、悪い時はもちろんですが、「痛くなくても定期的な歯科受診」と口の中を清潔に保つことが必要なのです。

舌や歯茎を観察

 最後に口腔がん早期発見のためのセルフチェックをお教えします。毎日する必要はありません。10日程度に1回、歯磨きの際にしてはいかがでしょうか。例えば8(歯)の付く日とか決めておくといいかもしれません。

 鏡を使って舌、歯茎、頬、唇の粘膜を観察します。(1)色の変化(白い、赤い)、ザラザラ凹凸がある(2)しこりがある(3)口内炎かな?と思うものが治らない-。こんな症状が一つでも2週間以上続く場合は、近くの歯科医院、耳鼻咽喉科を受診し、年に2回は「痛くなくても定期的な歯科受診」をお願いします。

河北新報掲載:2023年8月25日

杉浦 剛
(すぎうら つよし)

愛知県出身。1991年大阪大学歯学部 卒業 。1995年大阪大学大学院歯学研究科修了。英国バーミンガム大学CRC癌研究所研究員、九州大学顎顔面腫瘍制御学分野准教授、鹿児島大学医歯学総合研究科顎顔面疾患制御学分野教授などを経て、2022年東北大学大学院歯学研究科顎顔面口腔腫瘍外科学分野教授・東北大学病院歯科顎口腔外科科長に就任。

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