黒い影が見える…飛蚊症
國方 彦志(東北大学病院 眼科 副科長)
2026.9.11 Fri
網膜剥離などリスクも
いわゆる「蚊・ごみ・黒い点が飛ぶ」という飛蚊(ひぶん)症は、眼科ではありふれた症状の一つですが、さまざまな目の病気に関わっています。
飛蚊症は眼球内の無色透明なゼリー状物質である硝子体の状態が変化したときに起きやすく、硝子体にできた濁りの影が網膜に投影されて生じます。見え方は点状、線状、円状など多様で、眼を動かすと一緒にゆらゆらと揺れます。濁りが網膜表面に近いと明瞭な影として認識され、青空や白い壁などを見た場合はより気付きやすいです。
大半は加齢要因
他に目の病気などがない正常な人でも症状を自覚することがあり、生理的飛蚊症と言います。高齢や近視などにより生じる「後部硝子体剥離」が主な原因です。
硝子体は眼球の奥にある網膜の中心部、黄斑部と視神経乳頭で強く密着しています。黄斑部は視神経とつながっており、視力に最も重要な場所です。後部硝子体剥離は、加齢とともに硝子体が少しずつ液体に変化して体積が小さくなり、黄斑部やその周辺の網膜から硝子体が剥離する状態です。50歳前後から自然に生じ、近視のほか、交通事故などの外傷、糖尿病網膜症やぶどう膜炎などの既往があると、より早く生じます。
飛蚊症の発症初期は、蚊や輪っかが飛んで見えるなど明らかな自覚がありますが、年月を経て気にならなくなることも多いです。しかし、癒着が強く、後部硝子体剥離がうまく起きないこともあり、硝子体の膜が黄斑部の網膜面に残る黄斑前膜や、黄斑部が引っ張られて裂けてしまう黄斑円孔が生じます。網膜の周辺部が破れて網膜剥離に至り失明することもあります。
光視症にも注意
まぶたを閉じていても稲妻のような光を自覚する光視症を併発することも多いです。網膜細胞が刺激されて生じる症状で、飛蚊症とともに注意が必要です。光視症は、脳血管障害、脳腫瘍、てんかん、片頭痛などでも生じます。
高齢による生理的飛蚊症であれば注意深く経過観察します。しかし、飛蚊症の症状の新たな発生や視力低下のほか、光視症を自覚する場合は網膜剥離のリスクが高く、眼科で網膜を入念に検査する必要があります。
網膜剥離の主な治療法は、網膜裂孔を焼くレーザー光凝固や冷凍凝固、網膜を元の位置に戻す強膜バックリングや硝子体手術があります。東北大病院では、巨大網膜裂孔による難治性網膜剥離に対し、体への負担が少ない極小切開硝子体手術の有効性を発見し実施しています。
飛蚊症には、硝子体出血やぶどう膜炎によるものもあり、網膜剥離などの重症例も含まれています。症状があれば、まずは早期に眼科を受診してください。
河北新報掲載:2023年10月27日
國方 彦志
(くにかた ひろし)
茨城県出身。1997年東北大学医学部卒業。2008年東北大学病院眼科講師、2012年東北大学医学部眼科准教授に就任。2019年から東北大学病院特命教授(東北大学病院デイサージャリーセンター長)を務め、2024年東北大学アイバンク理事長に就任。専門は網膜硝子体疾患・緑内障・白内障の外科的治療。