手足のできもの「歯性病巣」が原因かも
江草宏(東北大学病院 咬合修復科 科長)
2026.8.7 Fri
口内治療で皮膚症状の改善も
炎症物質が誘発
手のひらや足の裏に、小さな水疱やウミの袋(膿疱(のうほう))が繰り返しできる「掌蹠(しょうせき)膿疱症」。実は「お口の中のトラブル」が原因になっているケースがあります。
体の一部に慢性的な炎症があると、遠く離れた場所に免疫反応を引き起こす仕組みがあり、原因となる口内の病巣を「歯性(しせい)病巣」と呼びます。歯の神経などが感染し自覚症状のないまま歯の根元の骨にウミがたまる根尖性(こんせんせい)歯周炎や、歯茎の感染症である歯周病などが代表例です。慢性炎症で作られた炎症物質が血液で手足に運ばれ、症状を誘発すると考えられ、日本人の同病の約6割で歯性病巣が発症因子との報告があります。
とはいえ、治療の中心は皮膚科です。手足に膿疱ができ、乾いて剥がれ落ちる場合は、まずは皮膚科を受診し適切な診断を受けてください。掌蹠膿疱症は喫煙のほか、喉の「扁桃(へんとう)病巣」や鼻の「副鼻腔(ふくびくう)炎」なども関与するため、皮膚科医がこれらを探り、禁煙指導や必要に応じた歯科への紹介、投薬などを行います。
歯科受診が重要
皮膚科を受診する際は、現在の歯科治療の有無を医師に伝えてください。過去に神経を抜いた歯がある、歯茎におできができる、歯茎が時々浮く、といった口内サインの有無も伝えると良いです。口の病巣は無症状で進行することも多いため、自覚症状がなくても歯科受診が重要となります。
紹介された歯科医院ではエックス線等で精査し、原因があれば歯の根の治療や歯周病治療、場合によっては抜歯を行います。歯科治療中に病巣へ刺激が加わることで、手足の症状が一時的に悪化することがあります。その際は慌てずに医師や歯科医師の指示に従ってください。口内治療の完了で皮膚症状が改善する方は少なくありません。
歯の治療後も症状が治まらない場合、まれに歯科金属アレルギーが原因のこともあります。その際は皮膚科で検査し、歯科で原因金属を取り除く治療へ移行します。この際に重要なのは、歯科金属アレルギーを疑う前に、必ず歯性病巣の治療を終えておくことです。
掌蹠膿疱症の治療では皮膚科と歯科の緊密な連携が不可欠です。普段から定期的な歯科検診で「隠れ炎症」を早期発見・治療しておくことが、手足の健康を守ることにもつながります。頑固な皮膚症状に悩む方は、ぜひ口内の健康状態にも目を向けてみてください。
河北新報掲載:2026年6月12日
江草 宏
(えぐさ ひろし)
広島県生まれ。広島大学大学院歯学研究科修了。香港大学研究助手、米国UCLA博士研究員、大阪大学大学院歯学研究科助教を経て、2014年に東北大学大学院歯学研究科教授に就任。2018年より東北大学病院副病院長、2022年より総括副病院長(歯科診療部門長)を務め、2026年より副病院長。歯科補綴学および再生歯学を専門とする。